<南風>宇宙を踊る

 世界最大規模のフラのお祭り、メリー・モナーク・フェスティバルは今年も大盛況でした。ハワイ王朝7代君主デービッド・カラカウア、別名メリー・モナーク(陽気な王様)を称(たた)えたイベントです。カラカウア王は芸術をこよなく愛し、それまでキリスト教宣教師に禁止されていたフラを復興させたことで知られます。

 普段は静かなハワイ島ヒロの町も、メリー・モナーク期間中は世界各地からの観光客で大にぎわい。ハワイアン・ドレスや生花のレイを身につけた人々が町中にあふれます。無料のフラショーも各地で行われます。

 目玉はなんといっても、フラのオリンピックとも言える大会です。ミスアロハフラ、カヒコ(古典フラ)、アウアナ(現代フラ)の3部門があり、夕方6時から深夜まで3日間、世界最高峰のダンサーが競います。抽選制のチケットは入手困難なことで有名なのですが、私は幸運なことに今年も観戦することができました。

 今年のミスアロハフラ出場者の一人が踊った曲が、ナニ・ベヌーゼ。ハワイ語の「美しい金星」です。天高く、キラキラと輝く金星の美しさを、優雅な踊りで表現していました。金星といえば、カラカウア王も天文学に造詣が深いことで知られています。1874年の金星の太陽面通過の時にはイギリスから天文学者を招待し、半年間、観測しました。

 美しい自然と星空に恵まれたハワイ。ハワイアンの祖先のポリネシア人はコンパスがなかった時代、星々を頼りに自由に大海原を行き来する、いわば天文学者でした。人々の生活にとって天文学の知識は必要不可欠だったのです。フラでも星々がうたわれており、文字がなかったハワイでは、まさしく体を使って宇宙を表現していました。

 かくいう私のハワイアンネームは「クウ・レイ・ホク(私の星のレイ)」。久々にフラが踊りたくなりました。

(嘉数悠子、国立天文台ハワイ観測所アウトリーチ・スペシャリスト)

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