ローカル線「千人未満」存廃協議 国交省検討会提言 3年以内に結論

 国土交通省の有識者検討会は25日、人口減や新型コロナウイルスの影響で利用者が低迷するローカル鉄道の再構築に関する提言をまとめた。存続や廃止を前提とせず、国と沿線自治体、事業者による地域協議会を設け、鉄道の利用促進などを議論する仕組みを盛り込んだ。JR線区の協議対象は、1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が平時で千人未満などが目安。協議会設置から3年以内に鉄道を存続させるかバスなどへ転換するか結論を出す。

 事業者か沿線自治体の要請を受け、国が「特定線区再構築協議会(仮称)」を設置する。利用状況が危機的で、複数の都道府県や経済圏、生活圏にまたがるなど合意形成に広域的な調整が必要とされる線区が対象。利用実態の分析のほか、増収や利便性アップに向けた実証事業などの取り組みにかかる経費を支援する。来年度から協議に入れるよう準備を進める。

 国交省は対象となる具体的な線区は示さなかったが、コロナ禍の影響がない2019年度に平時の輸送密度が千人未満だったJR線区は全国で100程度。このうち、JR西日本が今年4月に公表した線区別の経営状況によると、岡山支社管内(岡山県、広島県東部など)では芸備線東城―備後落合(輸送密度11人)、因美線東津山―智頭(同179人)など3路線6区間が該当することになる。

 一方、提言では隣接する駅間の1時間当たりの乗客数(上り、下りのいずれか)が1区間でも500人を上回っている場合は対象外とした。都道府県庁所在地など拠点都市をつなぐ特急、重要な貨物列車が走るJR線区、自治体出資の第三セクターなども除外するとし、協議会設置は地域の判断に委ねた形だ。

 JRは、輸送密度が2千人を下回ると鉄道サービスの維持が困難と主張。国交省は「JRの考えよりも厳しい状況に限るべきだとの議論があり、半分の千人未満としたが、あくまでも目安。千人を下回ったら必ず協議会を設置しなければならないというものではない」と説明。その上で「地域の公共交通のグランドデザインを描くのは各自治体の仕事。まずは各自治体が汗をかいて事業者と議論し、うまくいかない場合に国がバックアップしていく」などとした。

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