色の濃淡や原料の具合…感覚研ぎ澄まし和紙と“語る” 越前和紙すき職人、古澤花乃さん

越前和紙の表面を覆う水鏡に、そっと手を触れる古澤花乃さん=福井県越前市岩本町の五十嵐製紙

 白い指が水鏡を静かになでる。波紋とともに越前和紙の表面に金粉が広がり、竜をモチーフにした模様が浮かぶ。どんなに冷たくても手袋はつけない。「感覚がずれると、水の膜だけでなく紙に触れて傷めてしまうから」。古澤花乃(かの)さん(26)=兵庫県出身、福井県越前市=は、和紙と語り合うかのように生地をじっと見つめた。

 水分をたっぷり含んだ和紙の原料を桁ですく日々は、想像していた以上に体力勝負。最初の1年間は筋肉痛が絶えなかった。2人1組で行うだけに、呼吸を合わせることも大切だ。

 体は慣れても技術と勘はまだ磨き始めたばかり。水にとろみをつける原料「ネリ」の混ぜ具合、紙の良しあしや色の濃淡―。「マニュアルのない世界。すべて感覚で判断するんです」。工房の先輩から親身になって指導を受け、「こういうやり方もあるんだって、教わる度に発見がありますね」とワクワクが止まらない。

 「布のように丈夫で、工夫次第で何にでもなる。立体の製品も作れるんですよ」。半球状の紙の器を指さし「越前和紙は大きな可能性を持っている。そこが魅力」と瞳を輝かせる。自分なりに表現できるよう基本の習得に打ち込み、いつか個人で作品を制作したいと夢を抱く。

 伝統工芸に関わる仕事を考えていた大学生時代、インターンで五十嵐製紙(同市)を訪れ、さまざまな技を駆使して模様をすき込む越前和紙に衝撃を受けた。「和紙は無地しかないと思っていました。こんなに芸術性あふれるものだったなんて」。福井に知り合いはいなかったが、卒業後すぐ同社に就職し単身移住した。

 出合いは和紙だけじゃなく「おろしそばのおいしさも衝撃的でした」。職人生活の傍ら、福井ライフも満喫している。

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