議会フロア「喫煙室」設置を撤回 長崎市議会 “お手盛り”に市民の目厳しく

検討会で喫煙室設置撤回を決める毎熊座長(中央)=長崎市議会

 長崎市議会は25日、新市庁舎議会フロアへの喫煙室設置方針を撤回した。外部から猛烈な批判を浴び、6月に内部の検討会で決定して1カ月で方針転換に追い込まれた。長崎新聞が全議員を対象に実施したアンケートでも反対が6割超。初めは「消極的容認派」だったが、世間の空気を察知し、反対へと態度を変えた議員もいたとみられる。

 発端は、6月17日の「新市庁舎建設に係る議会機能整備検討会」。議長の諮問機関で、一人会派を除く各会派の市議11人が出席した。賛否の声が出る中、11月末に新庁舎完成を予定し、工期が差し迫っていることなどを理由に喫煙室設置の方針を決めた。これに対し、市民の批判が殺到。市医師会などから撤回や中止を求める要望書提出も相次いだ。ある議員には「たばこをやめるか、議員を辞めるか」と迫る電話もあったという。
 長崎新聞は今月中旬、喫煙室設置への“本音”を探るため、「諮問する立場。議員の意見を尊重する」とした深堀義昭議長を除く全議員39人に、設置の賛否と理由を尋ねるアンケートを実施。22日までに全員から回答を得た。その結果、賛成4人、反対25人、「その他」が10人だった。
 主な反対の理由は「議会フロアだけ税金を使って喫煙室を造るのは市民の理解が得られない」「議員特権との批判を受ける」「市庁舎を訪れた市民も利用できる場所に設置すべき」。「完璧な分煙対策は不可能」を挙げる議員も多かった。6月の検討会では「持ち帰って検討したい」との声もあったのに設置を決定したプロセスを巡り「十分な議論が尽くされなかったのは遺憾」との意見も。
 一方、賛成と答えた議員は「喫煙者の権利」「たばこ税を負担している」と主張した。市によると、2021年度の市たばこ税収入は26億7700万円。市が用途を自由に決められる財源の一つとして、市民サービスに活用されている。近年は人口減や喫煙率低下で税収は減少傾向。16年度と比べ3億3600万円減った。
 市議会は25日、検討会を開催し座長の毎熊政直議員が設置撤回を提案。全会一致で了承された。「議論を尽くす必要があった。反省が必要」との発言も出た。市議の4分の1は喫煙者。非喫煙議員は当初から反対したが、喫煙容認派がいる主要会派に押し切られた。だが「お手盛り喫煙室」(関係者)への社会の視線は厳しく、早々に火消しに走ったとみられる。「来年春には選挙(市議選)もあるけんね」とある議員はぼやく。
 田上富久市長は25日の定例会見で、新庁舎の敷地内に喫煙場所を設置しない方針を改めて説明。市内全体の喫煙場所の在り方について「分煙体制をしっかり取る中で一定協議していく必要がある」とした。


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