ビリー・ホリデイの真実を明かす 映画「ザ・ユナイテッド・ステイツVS.ビリー・ホリデイ」 西京シネクラブが7月30日に山口市で上映

 1940年代に人気となり、1959年に44歳の若さで亡くなったアメリカの天才的ジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイは、ドラッグやアルコール中毒、悪い男たちによって自滅したという印象を持たれている。だが、人種差別撤廃を求める公民権運動を巡る人気楽曲「奇妙な果実」を歌わないようにとの命令に反抗したことが、彼女の死につながったことを、イギリス人作家ヨハン・ハリが「麻薬と人間100年の物語」で暴き出した。その本を原作にした映画「ザ・ユナイテッド・ステイツVS.ビリー・ホリデイ」(2021年、アメリカ)が、7月30日(土)に山口県教育会館(山口市大手町2)で山口県内初上映される。時間は、午前10時半、午後2時、7時からの3回。

©2021 Billie Holiday Films, LLC. All rights reserved.

 1947年、ビリー・ホリデイは人気の絶頂にいた。そんな中ビリーは、夫のモンローとマネジャーから「『奇妙な果実』は歌うな」と言い渡される。「奇妙な果実」は、1939年にリリースされた。虐殺されて木に吊り下げられた黒人の死体を果実に例えた歌詞を通じ、アメリカの人種差別を告発し、公民権運動初期の象徴的な存在となった楽曲だ。この曲が人々を扇動すると危険視した政府が圧力をかけたのだが、彼女は「わたしには大切な歌」だと反発。そこで、麻薬使用の罪でビリーを追い込もうと、黒人の捜査官ジミー・フレッチャーが彼女の熱心なファンを装い、おとり捜査を開始する―。

©2021 Billie Holiday Films, LLC. All rights reserved.

 ビリーを演じたのは、1984年アメリカ生まれのアンドラ・デイ。子供の頃から教会で歌い、ビリー・ホリデイの歌声に魅了され、ビリーの通称"レディ・デイ"から"デイ"をもらったと言われている。スティーヴィー・ワンダーに歌声を気に入られ、2015年に遅咲きのメジャー・デビュー。スティーヴィーと共演したCMやスパイク・リーが手掛けたMV出演でも話題を集めた。デビュー・アルバム「チアーズ・トゥ・ザ・フォール」はグラミー賞最優秀R&Bアルバム賞にノミネートされ、その代表曲「ライズ・アップ」は最優秀R&Bパフォーマンス賞候補に。今年4月の第64回グラミー賞では、本作のサウンド・トラックが「最優秀コンピレーション・サウンドトラック」を受賞した。さらに、彼女は本作が初めての演技経験だったにも関わらず、2021年度の第78回ゴールデングローブ賞主演女優賞ドラマ部門を受賞し、同年の第93回アカデミー賞では主演女優賞にノミネートされた。
 監督はリー・ダニエルズ。製作・監督を務めた「プレシャス」(2009年)は第82回アカデミー賞で2部門受賞4部門ノミネートを果たし、歴代大統領に仕えた黒人執事の人生を描いた「大統領の執事の涙」(2013年)は各国でヒットを記録。自身もアフリカ系アメリカ人で、人種差別をテーマとした作品などで高く評価されている。
 前売り券は一般1500円で、同館、YCAM、山口市民会館、C.S赤れんが、三好屋楽器店で購入でき、電話予約・当日受け取りでも適用される。当日券は、一般1800円、19歳から25歳まで1000円、18歳以下800円。予約・問い合わせは、主催の西京シネクラブ(TEL083-928-2688)へ。
 「主演のアンドラ・デイは、ほぼ演技未経験とは思えない存在感で魅了する。人種差別に抗議するブラック・ライブズ・マター(BLM)運動や、『奇妙な果実』の曲について、多くの人に知ってほしい」と、同クラブ代表の大久保雅子さん。

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