四国総体 故小嶺氏の教え子対決 長総大付・定方監督/前橋育英・山田監督

試合を終え、小嶺氏が愛用していた麦わら帽子を手に笑顔を見せる長崎総合科学大付の定方監督(左)と前橋育英の山田監督=徳島県鳴門市、鳴門ポカリスエットスタジアム

 高校サッカー界に多大な影響を与え、今年1月に76歳で死去した小嶺忠敏氏の教え子2人が24日、インターハイ出場校の監督として対戦した。小嶺氏から長崎総合科学大付を引き継いだ定方敏和監督(50)と、優勝候補の前橋育英(群馬)を率いる山田耕介監督(62)。小嶺サッカーの神髄を知る2人の後継者が、運命に導かれるように恩師の他界後初となる全国舞台で顔を合わせた。
 「小嶺先生のご配慮でしょうね」「巡り合わせだな」-。
 キックオフ前、両監督は短く言葉を交わした。2人が再会するのは、小嶺氏の葬儀以来。出場52校の中からくじで決まった“絶好”の対戦カードに、どちらも勝負以上の意味を見いだしていた。
 定方監督は国見高3年時に副主将を務め、1990年度の第69回全国高校サッカー選手権で優勝。小嶺氏に請われて2008年、長総大付に赴任した。現在15年目。他のどの指導者よりも長い時間を小嶺氏と過ごし、今夏もしっかりとチームを全国に導いた。
 一方の山田監督は小嶺氏の最初の赴任校、島原商の出身。主将として1977年インターハイで九州勢初の日本一を成し遂げた。恩師の背中を追って指導者の道を志し、前橋育英をゼロから現在の地位まで引き上げた屈指の名将だ。
 この日の試合は、恩師が愛用した麦わら帽子が長総大付ベンチで見守る中でキックオフした。前橋育英がテクニックを見せれば、長総大付も代名詞のハードワークを披露。どちらも存分に持ち味を発揮した末、1-0で前橋育英が接戦を制した。
 「前橋育英さんとやれたことがうれしい。多くの勉強をさせてもらった」。定方監督は敗れてなお、晴れやかな表情を浮かべた。対する山田監督は、全国大会で小嶺氏と過去3度対戦する機会があり、いずれも敗れていた。生前のリベンジはかなわなかったが、小嶺氏が育てたチームから記念すべき初勝利を挙げて「きょうは先生のすごさを改めて思い返していた。今年は頑張る1年にしないといけないね」と感慨深げだった。


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