伝統芸能をめぐる高校生の暑い夏、「神楽甲子園」です。参加校の中で最もメンバーの人数が少ない、女子5人の挑戦にスポットをあてました。
ことしで11回目となった「神楽甲子園」。全国の神楽に取り組む高校生たちが一堂に会する「ハレの舞台」です。
ことしは、北は富山、南は宮崎など県外の高校を含む合わせて17校が参加。2日間にわたり、およそ250人がそれぞれの舞いを披露しました。
西城紫水高校神楽部は最も少ない5人で参加。メンバーは全員が女子で、3年生3人と2年生・1年生が1人ずつです。
この中で1人で舞いを担当する元原ひなのさん。本番を前に少し緊張した様子です。
西城紫水高校 3年生 元原ひなのさん
「内心緊張していますけど、見てくれるお客さまがちゃんと楽しんでいただけるように精いっぱいがんばろうと思います」
ただでさえコロナ禍で人前で披露する機会が減っている中、これだけ多くの人の前で舞うことはなかなかありません。
3年生
「女子だからこその団結力じゃない? 全員女子だからこそのこの団結力みたいな。そして何より人数が少ない! 少人数だからこそ、めっちゃ、はっちゃけとる。1番はっちゃけとる気がする」
この日のためにおよそ3か月間、地元の人や高校のOB・OGなどが参加している西城町神楽愛好会の指導を受けながら練習してきました。
そして、迎えた本番…。
「せーの、がんばるぞ! おー!」
西城紫水高校の「大国様」です。作物の豊作や身体の健全を祈って舞います。
3年生の3人にとっては、これが最後の大きな舞台。練習を始めた当初、元原さんは足の細かい動きやセリフの習得がうまくいかず、本番でしっかり舞うことができるか心配だったといいます。
しかし、そんな元原さんの周りには一緒に練習に励む仲間たちがいました。
舞台の後半では、コロナ禍でここ数年、神楽甲子園では見ることができなかった「餅まき」です。
お客さんは餅を取ろうと一斉に手をあげ、舞台は盛り上がりを見せました。子どもたちも大喜び。「餅まき」には全ての人に福が訪れますようにという願いが込められています。
舞台を終え、それぞれの想いがあふれます。
奏楽を担当した藤川ほたるさんは、何でも言い合えるこの5人だったからこそ、一緒に練習を続けることができたと話します。
3年生・奏楽担当 藤川ほたるさん
「きょう、みんなで、5人全員そろって、この舞台に立てたことがものすごくうれしくて、もういっぱいいっぱいというか、そんな感じです」
3年生 部長・奏楽担当 柳川絢音さん
「部活ができる引退までの中で(後輩に神楽を)しっかり教えていきたいし、今いる後輩以外にもぜひ神楽部の伝統を受け継いでほしいと思う」
そして、元原さんは…。
元原ひなのさん
「大変なこともあるけど、見てくれる人を楽しませるということになると、一生懸命やって、すばらしい演技を見せることができたから、本当に神楽部をやっていて、よかったなと思う」
これからそれぞれ違う進路に進む3年生の3人…。「高校を卒業しても何らかの形で神楽と関わっていきたい。西城町を離れてもまた戻ってきたい」と話していました。