保育士わいせつ事件、保護者の怒りと苦悩今も 被害者の多さと悪質性に絶句…娘のトラウマ不安

保育士による、まな娘へのわいせつ事件を受け「思い出しただけでも腹立たしい」と語る両親=福井県内

 わいせつ行為で登録を取り消された保育士が、再登録する場合の規則を厳格化することなどを盛り込んだ改正児童福祉法が6月に国会で成立した。福井県内でも2021年、保育士によるわいせつ事件が起きた。容疑者の逮捕時に被害者となった女児の保護者が福井新聞の取材に応じ「思い出しただけでも腹立たしい」と怒りをあらわにした。トラウマ(心的外傷)など、まな娘の将来への不安もぬぐいきれない。

 「先生は、おなかざらざらって言わない」。ある日の夜、就寝前に母が娘の体に保湿剤を塗っている時に娘がつぶやいた。なぜ先生にそんなことが分かるのか―。娘に聞くと「昼寝中に触ってくる」。話を掘り下げていくと、娘は先生にされたことを全て淡々と答えた。母は「あいまいな返事はなく、うそには聞こえなかった。それで私は確信を持った」と打ち明けた。

 福井県警の捜査の結果、保育士の男は逮捕され、ほかの複数の女児への犯行も明らかになった。公判を傍聴した両親は、被害者の多さと悪質性に「想像を超えていた」と絶句したという。男には小児性愛障害があるとされたが、母は「病気が原因だと言っているようで、反省が全く見えなかった」と、怒りはさらに強くなった。

 これまでの児童福祉法は、登録を取り消された保育士は2年経過すれば再登録できることになっていた。改正法が施行される23年からは、刑終了後最長10年に延長される。さらに知事が認めない限り、再登録できないことになった。それでも両親は「再登録の道が残されたこと自体おかしい」と話す。

 忌まわしい事件から1年以上が経過したが苦悩は続く。娘が成長して、わいせつ被害を受けたことを思い出す可能性もあり、母は「私たちから娘に事実を伝えることはできない。トラウマなどの2次被害が怖い」と不安を漏らす。スーパーで買い物をしていても、男と似た年齢や体格の男性が近くにいると「娘を近づけさせられない」。日常生活は変わってしまった。

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 両親は事件を振り返り「娘が性被害に遭うなんて思いもしなかった。親の目が届かない所で、子どもが被害に遭っているかもしれない。人ごととは思わないでほしい」と呼び掛ける。子どもの違和感にいち早く気付くためにも、「福井は共働き率が高く、疲れて会話する時間が取れないかもしれないが、最低限は必要」と家庭内のコミュニケーションの大切さを強調した。

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