香川照之が記憶をなくしたエキストラ役者に 2008年以来の単独主演 「宮松と山下」公開決定

2008年以来となる香川照之の単独主演作品「宮松と山下」が、 11月18日から劇場公開されることが決まった。監督集団「5月」を結成している、数多くのCMや教育番組「ピタゴラスイッチ」を手掛けてきた東京藝術大学名誉教授の佐藤雅彦、NHKでドラマ演出を行ってきた関友太郎、多岐にわたりメディアデザインを手掛ける平瀬謙太朗の3人が監督を務める。

「宮松と山下」は、エキストラ役者として生きる男・宮松を主人公とした作品。端役専門のエキストラ役者の宮松は、時代劇で弓矢に打たれ、大勢のヤクザのひとりとして路上で撃たれ、ヒットマンの凶弾に倒れるなど、来る日も来る日も殺され続けている。真面目に殺され続ける宮松の生活は、派手さはないけれどもつつましく静かな日々だった。そんな宮松だが、実は過去の記憶がなかった。なにが好きだったのか、どこで何をしていたのか、自分が何者だったのか。なにも思い出せない中、宮松は毎日数ページだけ渡される「主人公ではない人生」を演じ続けるのだった。

宮松を演じるのは香川照之。端役を一生懸命に取り組む目立たない男の生活を描き出す。ほかに、津田寛治、尾美としのり、中越典子らが顔をそろえている。

香川照之、監督(関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦)のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■香川照之

『宮松と山下』は、具体名を出して申し訳ないが、2006年に撮影した西川美和監督の『ゆれる』という映画の脚本を初見で読んで以来の異様な衝撃が走った台本だったが、聞くとその映画のメガホンをとる監督が何と3人いると言う。
2人は30代の若者。残る1人は年齢不詳の男。
若者の1人はどこまでも芸術的な感覚で世界を捉えていて、中世ヨーロッパの抽象画家のようだ。もう1人は、辛うじて演技の方向性を演者に伝えてくるが、目の奥では全く違う思考がカチカチと常に動いていて油断がならない。年齢不詳の男は思慮深い教授そのもので、豊かな知識の会話術に満ちながら、その実なにを考えているのか皆目分からない。
そんな彼ら3人の巧みな言葉に乗せられて、私のアイディアや感性も暴発していく。ああ、久しぶりに芯のある演技をしているな...完成した作品は、やはり久しぶりの変態性に満ちていた。
狂っている。褒め言葉だ。
こんな映画が欲しかった。

■監督 関友太郎 / 平瀬謙太朗 / 佐藤雅彦

この映画は、当初、「とうてい実現できそうにない構想」として、私たち3人の監督の間では宙に浮いていた。
それが、ある日、「香川照之」という名前がひとりの口から漏れた瞬間。現実に完璧に定着することができると3人の監督は直感した。
エキストラ役者として己の個を消してどんな場所にでも潜む役を演じつつも、画面に写ったら最後、観客を物語の世界へとグイグイと連れて行く存在感。そんな矛盾する両面性。

もう香川照之しかいなかった。

そして、それがいかに素晴らしい閃きであったかを、私たちはその後、嫌というほど思い知ることになる。
撮影の最中、宮松という人物を求めて、香川さんはずっと私たちと一緒に悩み、試し、答えを出した。編集中、香川さんが我々に与えてくれた表情や演技には、とんでもない量と質の情報が含まれていることが分かった。

香川照之の演技力、人間性を我々は充分知っている。
と思っている。しかし、

まだ世の中は香川照之の緻密さを知らない。
まだ世の中は香川照之の恐ろしさを知らない。
まだ世の中は香川照之の本性を知らない。
私たち3人の監督は、それを今、確信している。

香川照之の真髄、この映画にあり。

【作品情報】
宮松と山下
2022年11月18日(金)、新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
配給:ビターズ・エンド
©2022『宮松と山下』製作委員会

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