ふとんにプリント、灯台で「新世界」に光…“異界”を立体表現 さいたま文学館でマーサ・ナカムラ展

ふとんに「おふとん」という詩をプリントした展示

 最年少で萩原朔太郎賞を受賞した埼玉県松伏町出身の詩人、マーサ・ナカムラさん(31)の巡回展「“もっと”変な話をしたい。異界への招待」が、桶川市若宮1丁目のさいたま文学館で開かれている。読むものを異界へと誘う独特の作品から“異界の詩人”と呼ばれるマーサさん。少女時代から現在までの足跡をたどっている。8月28日まで。

 マーサさんは1990年生まれ。早稲田大学文化構想学部で詩人の蜂飼耳さんの詩の実作講義を受講し、詩の魅力に目覚める。卒業後、「現代詩手帖」に投稿を重ね、2016年に第54回現代詩手帖賞受賞。18年に第一詩集「狸の匣(たぬきのはこ)」が中原中也賞、20年に第二詩集「雨をよぶ灯台」で萩原朔太郎賞を受賞している。

 今回は群馬県前橋市の萩原朔太郎記念・水と緑のまち前橋文学館が昨年開催したマーサ・ナカムラ展の巡回展。「雨をよぶ灯台」を軸に資料を展示している。会場に灯台の模型が設置され、壁に掲げた「新世界」という詩に灯台の光を当てたり、実物のふとんに「おふとん」という詩をプリントしたりするなど、その世界観をビジュアルに表現している。

 幼少期の資料は、保育所時代に表紙を飾った「広報まつぶし」から、中学時代に描いた自画像、「AA」と評点がついた読書ノートまで、才能の片りんを伺わせるものも。伝統的なものが好きで、中学・高校時代には能楽部に所属。愛用した能楽の衣裳や謡本なども展示されている。

 早大で蜂飼さんの講義で書いた詩やレポート、のちに詩集「狸の匣」に収められる詩「発見」の創作メモ、影響を受けたアイヌ神謡集の展示など、創作の裏側を伺わせる資料も紹介されている。

 館内の図書室でマーサさんの作品を読むことができる。展示担当の学芸員の高橋美貴さん(28)は「異界の世界にどっぷりと浸かってほしい。そして、自分も詩を書いてみようという気持ちになってもらえたら」と話している。

 問い合わせは、同館(電話048.789.1515)へ。

マーサ・ナカムラ展から、「雨をよぶ灯台」をイメージした展示=埼玉県桶川市若宮1丁目のさいたま文学館

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