「不漁」や「原油高」で苦境に 試行錯誤で活路を 広島・三原市の名物「タコ」

販路拡大に向け、ブランド化を目指している三原名物「タコ」についてです。タコ漁が最盛期を迎えている中、漁師は「不漁」「原油高」と苦境に立たされています。

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広島・三原市の特産品マダコ。タコ漁は、未明から早朝にかけて船を出し、毎年夏に最盛期を迎えます。

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船長を務める81歳の礒田文夫さんは、この道65年のベテラン漁師です。

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漁師 礒田文夫さん
「よっしゃ。巻いた。しかえて(船首を左に)」

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山や建物など陸上にあるものを目印にして、事前に仕掛けたタコつぼのありかを探し当てました。長年、培った経験や勘がものをいう「山立て」という方法です。

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長さおよそ1000メートルの縄でつながれたタコつぼは100個ほど。水深およそ25メートルの海中から次々と引き上げられていきます。

礒田文夫さん
「おるまあ。タコが少ないけえ。ことしはおらんのんよ。どこ行ったらおるんじゃ。おった」

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三原市漁業協同組合によりますと、タコの年間水揚げ量は6年前が29トン余りで、去年は21トンほどでした。減少傾向が続いていて、ことしは去年の同じ時期と比べて半分以下だということです。

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礒田文夫さん
「ダメージが大きい。3分の1もおらん」

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資源保護のため、200グラム未満のタコは、逃がしています。減少した詳しい要因はわかっていませんが、三原市や漁協によりますと、温暖化や海の栄養不足、豪雨といった「環境の変化」のほか、「乱獲」などが一因とされています。

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礒田文夫さん
「豪雨災害があったろ。あれからこっちにおらんなった。少ないけえ、だめよ。だいたい、こがいに(タコが)小そうなかったんよ」

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1日の水揚げ量が100キロ必要なところ、この日、礒田さんの船で獲れたのは55キロ余り。大きいサイズのタコは8杯でした。

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みんなで手分けして「活き締め」をします。漁獲量が減る中、追い打ちをかけているのが、原油価格の高騰です。

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磯田文夫さん
「どうもこうも、食べていかりゃせんわいね。ほいじゃけえ、出られんよ。漁がないんじゃけえ。油代が(1日)1万円分も要ったら、あんた、タコ20キロ・30キロ獲ってきよったら、油代がタコ10キロ分は要ろう」

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漁協が販売する1リットルあたりの船の燃油価格は、去年1月の70円から上昇し、ことし4月には1.5倍以上の110円まで値上がりしました。

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漁師 礒田文夫さん(81)
「ちーとでもの、油を安うしてくれりゃあ、何かを免除してくれりゃええけど、何にもありゃせんわいね、漁師の人らは」

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漁協は、希少になりつつあるタコのブランド価値を高めようと乗り出しています。広島県産応援登録制度を活用、さらに「三原やっさタコ」として商標登録しました。

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三原市漁業協同組合 浜松照行組合長
「もっと早うにしときゃあ、えかった。(漁師の)高齢化が進んで、えっと漁に行かれんようになって。1円でも良い単価のところに売るようにしてあげたいなと」

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急速に冷凍や真空パックする機械のほか、新商品の缶詰を作る環境をおよそ1500万円かけて整備しました。

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缶詰「蛸の生姜煮」と珍味で貴重だという「蛸卵」の2種類が完成。

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来月の発売を前にお披露目会が開かれました。地元の関係者も期待を寄せています。

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フレスタ 水産チーム 正田修司リーダー
「食べるだけではなくて、アレンジして、いろんな料理に使えるんだろうなと」

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三原観光協会 鶴田幸彦会長
「もう首を長くして(完成を)待っていたので、三原市や商工会議所と連携して一緒になってバックアップしたいなと思う」

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苦境が続く日本屈指のマダコ産地で模索が続けられています。

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― 三原市漁協組合のタコ漁師は10人で、平均年齢80歳。最高齢は86歳。担い手不足も不漁に拍車をかけています。缶詰は、来月8日にスーパーや道の駅などで販売される予定です。

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