【厚労省安全対策調査会】「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲見直し/コデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリンは鎮咳薬以外も対象に

【2022.07.27配信】厚生労働省は7月27日、「第7回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を開き、一般用医薬品の「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲見直しについて議論した。コデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリンについてはこれまで、「鎮咳去痰薬に限る」「内用液剤に限る」と限定していたが、この限定をはずすことで了承された。

総合感冒薬でも依存や中毒報告受け

「濫用等のおそれのある医薬品」については、この成分を含む一般用医薬品等について、リスク区分に応じた情報提供等に加えて販売ルールが課されている。
購入者が若年者である場合の氏名・年齢の確認のほか、他店舗での購入状況や購入理由等の確認、販売時の数量の制限(原則として一人一包装 単位)などを求めている。

このたび、厚生労働科学特別研究事業「民間の依存症支援団体利用者を対象とする依存実態の再解析及び追加調査」(研究代表者国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部 嶋根 卓也氏)において、一般用医薬品の濫用による薬物依
存が報告されており、昨今の使用実態等を踏まえ、「濫用等のおそれのある医薬品」の範囲について検討を行うことになった。

薬物依存の民間支援団体であるダルク利用者を対象として一般用医薬品による依存症例の実態を把握することを目的とした厚労科研の調査によると、一般用医薬品のうち主たる依存の対象として、ジヒドロコデイン及び/又はメチルエフェドリンが含まれる鎮咳去痰薬のみならず、同成分を含んだ総合感冒薬の依存症例が報告されたという。
解熱鎮痛薬が報告されたが、ブロムワレリル尿素を含むものだった。

同調査においては、一般用医薬品の「入手しやすさ」や「合法性」が、高い再使用率につながっていると考察されているほか、大麻などの「違法薬物の使用歴がある」ことが特徴として挙げられている。

さらに、2017 年~2021 年に急性中毒に関する電話相談等を応需している公益財団法人日本中毒情報センターに寄せられた相談のうち、一般用医薬品を意図的に過量摂取した事例について、集計及び分析を行った。
薬効分類ごとに整理した結果、解熱鎮痛薬 389 件(33%)が一番多かったが、令和元年度厚労科研で主たる依存の対象とされたかぜ薬(総合感冒薬、210 件、18%)や鎮咳去痰薬(176 件、15%)についても多く確認された。
これらの総合感冒薬の中には鎮咳去痰薬に限り「濫用等のおそれのある医薬品」として指定しているジヒドロコデイン及び/又はメチルエフェドリンを含む総合感冒薬が挙げられた。また、メチルエフェドリンを含有する製剤については、内用液剤以外の剤型の鎮咳去痰薬及び総合感冒薬が含まれた。

こうしたことを受け、「濫用等のおそれのある医薬品」として指定される成分のうち、鎮咳去痰薬に限っているコデイン、ジヒドロコデイン及びメチルエフェドリンについては、鎮咳去痰薬に限らず総合感冒薬の依存症例が報告されていることから、「鎮咳去痰薬に限る。」との限定を外す。
加えて、メチルエフェドリンを含有する製剤については、内用液剤以外の剤型においても濫用の実態が報告されていることから、「内用液剤に限る。」との限定も外す。

販売ルールの遵守だけでなく、薬物濫用対策へのさらなる貢献に期待し て取組みを促す

今回の令和元年度厚労科研の結果では、一般用医薬品の濫用と違法薬物の使用との関連性が示唆されていることから、「濫用等のおそれのある医薬品」を販売する薬剤師や登録販売者には、販売ルールの遵守だけでなく、薬物濫用対策へのさらなる貢献に期待して取組みを促すとしている。

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