「下山中に足腰に力が入らなくなる時に事故が…」3年ぶり“行動制限なし”の富士山夏山シーズン 登山客を守る救助隊に密着

富士山は2022年、行動制限の無い中、夏山シーズンを迎えたくさんの登山客で賑わっています。警察は遭難などの事故に備え、3年ぶりに標高3500メートルの山小屋に救助隊を待機させています。

<静岡県警山岳遭難救助隊員と登山客のやり取り>

「大丈夫ですか?」

「登山道の中でもこんなところが多いので、あまり石を信じないように」

「でも、足が言うことを聞いてくれない」

静岡県警の山岳遭難救助隊です。隊員は28人、普段は警察署や交番で働き、事故が発生すると消防などと協力して救助に当たります。

<静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊浩行小隊長>

「九合目に待機し、パトロール中は山頂の小屋に立ち寄り、声掛けをしたりしている」

2022年は登山客の増加が見込まれる中、週末を中心に、2人の隊員が標高およそ3500メートルの山小屋に寝泊りして出動に備えています。

<静岡県警山岳遭難救助隊 山本健司隊員>

「ここで私たちは常駐している。基本的にはここで寝泊りしていて、何かあった際に出動する」

救助隊の山小屋での待機は、新型コロナの影響で、実に3年ぶりです。出動がなければ、登山道をパトロールし、登山者たちの安全を守っています。

<救助隊と登山客のやり取り>

「すいません!登山道を下りて欲しいので、九合目から登山道に戻れますか」

「はい」

「お願いします」

注意を受けた登山者が歩いていたのは登山道ではなく「ブル道」と呼ばれる資材運搬用の道です。

<静岡県警山岳遭難救助隊 山本健司隊員>

「人が歩く道ではないので、整備が行き届いているわけではないので、落石も多く危ない道」

登山道を外れて歩くと、落石に遭う危険があるばかりか、落石を引き起こし、他の登山客を危険にさらすことにもなりかねません。パトロールはこうした行為や登山道に異常がないか、登山者の服装・装備など、様々な点に注意して行っています。

<救助隊員と登山者のやり取り>

「大丈夫ですか?」

山頂に近づくと倒れ込む人の姿が増えてきます。標高が高い場所で体内の酸素が不足することで起こる「高山病」です。

<静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊浩行小隊長>

「呼吸を意識すると、すごく楽になる」

体調が悪そうな人には声をかけ、体内の酸素濃度を測り、水分補給や呼吸方法など対処方法についてアドバイスしています。

<登山客>

「教えてもらった通りにしたら復活した」

「うそっぽい(笑)」

救助隊がアドバイスした女の子は、その後体調が戻り、無事に山頂に向かうことができました。無事に登頂を果たした人たちに話を聞くと、登山中に少なからず危険を感じたといいます。

<登山客>

「何回か落ちそうになった。良くないが(登山道の)ひもをつかんだ」

「かなり寒かったし、体温の面ではちょっと怖かった」

しかし、実は事故が起こりやすいのは、山頂にたどり着いたその後なんです。

<静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊浩行小隊長>

「下山中に六合目・七合目付近で、足腰に力が入らなくなる時に事故が起きている」

静岡県警によると、富士山の遭難事故は、およそ9割が下山中です。2022年も7月26日夕方までに、静岡県側では10件の遭難事故が発生していますが、そのうち9件が下山中です。

<静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊浩行小隊長>

「色々な事案に遭遇してきたが、警察官として、人命救助、人を助けるという仕事には変わりない。訓練をして登って来れる隊員は限られているので、使命感を持ってやっている」

コロナ禍前の賑わいに戻りつつある富士山。その影には、登山の安全を支える人たちの姿があることを忘れてはいけません。

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