自作ヘッドマークを列車につけて記念撮影 東京メトロなどの「親子で社会科見学」を同行取材【前編・レポート】

千住検車区に勢ぞろいしたエース・13000系電車

2022年の夏休みスタートから1週間。再拡大するコロナにひるむことなく、鉄道各社は夏のイベントを開催、〝ウィズコロナに生き残る鉄道〟を実践します。そんな催しの一つ、2022年7月27日に開催された「親子で社会科見学!千住検車区~鉄道学校鉄道三昧ツアー」を同行取材しました。

クラブツーリズム(クラツー)、東京メトロ、岩倉高校の3者が共同企画したこのツアー、午前中はメトロ日比谷線の車両基地を見学、午後は〝鉄道学校〟として知られる東京・上野の岩倉高校での運転士や車掌体験と、鉄道づくしのメニューが用意されました。レポート前編は、300両以上が所属するメトロ千住検車区のルポ、後編は参加者大感激の岩倉高での鉄道体験をご紹介します。

鉄道の車両基地を観光資源化

近畿日本ツーリストなどと同じ、KNT-CTホールディングス傘下のクラツーは、鉄道ツアーが得意分野。メトロもファンサービスの一つとして、現場公開に力を入れます。

今回のツアー、クラツーが夏休みの親子連れをターゲットに、メトロの現場見学と鉄道学校体験をセットした現地集合・解散型のツアーを組んだわけですが、台東区観光課が企画協力で参加したのがミソ。

もともと鉄道の車両基地は、本来の観光とは縁遠い存在ですが、地元は検車区も有力な観光資源と考えます(もっとも、千住検車区があるのは荒川区なのですが……)。工場や研究機関などを観光資源化する取り組みを、観光・交通業界では「産業観光」と呼び、今後の有望株の一つです。

メトロ日比谷線の電車300両以上が所属

千住検車区から東京スカイツリーまでは直線距離で約4キロ。高層マンションの真ん中のツリーは意外とコンパクトに見えます。検車区のお昼時は、午前中の運用を終えた列車が次々に入区してきます

ここで千住検車区のプロフィール。最寄り駅は南千住で、日比谷線の車両308両が所属します。

日比谷線を走るメトロ車両は、開業年の1961年デビューの3000形が初代、1988年登場の03系が2代目で(3000形と03系は営団時代の車両ですね。すでに全車引退しています)、現在は全車両2017年に登場した13000系電車に置き換わっています。

「営団地下鉄」の回答にニアピン賞!?

ツアーのスタートは、検車区の会議室でメトロ車両部制作のアニメを見ながらのクイズ大会。「東京メトロの正式な名前は?」の問題では、「東京地下鉄」と正解した子どもだけでなく、「営団地下鉄」と答えた子どもにも〝ニアピン賞〟をあげたくなりました。

子どもたち大興奮のクイズ大会。回答の「180駅」は東京メトロの駅数です

会議室では日常点検のやり方も紹介されました。鉄道に詳しい方はご存じでしょうが、車両工場では車体のクレーン移動などを除き、機械による自動作業(オートメーション)はほとんどありません。

部品を手作業で、一つ一つはずして点検する。そうした〝人の力〟で巨大な電車がダイヤ通りに走り、乗客の安全が守られること、子どもたちも一定の驚きをもって受け止めていたようです。

メトロの担当者の方は、「最近の電車は電子部品が多用されるので、作業も細心の注意が求められる」。これには、子どもたちよりもお父さん・お母さんがうなずいていました。

会場では工具やパンタグラフの実物も展示されました。案内管と呼ばれる台座に取り付けるシュー(すり板)を交換します

ヘッドマークに「U5」

ここから、検車区ツアーのハイライト。子どもたちがデザインしたヘッドマークを、正式なマークに仕立て、本物の列車に掲出して記念写真を撮ります。取材陣にインタビュータイムが用意されていたので、何人かに話を聞きました。

ヘッドマークに「U5」とデザインした男の子。何かの頭文字かと思って聞いてみたら、名前が「ユウゴ君」。なるほど、大人になったらペンネームにも使えそうな、すてきな名前ですね。埼玉県三郷市在住で、ツアーはご両親がネットで見付けてくれました。

ユウゴ君ご自慢の「U5」ヘッドマーク。よく見るとTシャツも列車デザイン。鉄道好きが伝わってきます

乗ってみたい列車は、「成田エクスプレス(N’EX)」。確かにN’EXは、JR東日本が「日本を訪れた外国人が一番最初に乗る鉄道車両」として、デザイン面・サービス面に多くの新機軸を盛り込みました。そのことをちゃんと理解しているとは、さすが大人顔負けの鉄道ファン。

乗りたい列車は「瑞風」と「四季島」

もう一人、熱心に電車を見ていた男の子にも話を聞きましょう。「乗ってみたい列車はJR西日本の『TWILIGHT EXPRESS瑞風』とJR東日本の『TRAIN SUITE 四季島』」。

横で聞いていた東京メトロの方も、思わずうなずいていました。やっぱり瑞風や四季島は、全鉄道人あこがれの車両。いつかメトロにも、豪華観光列車が走る日がくればいいですね(たとえ乗り入れでも)。

お母さんに話を聞くと、自宅はさいたま市。小学校の友だちが鉄道好きで、親同士もママ友に。鉄道が広げるママ友ネットワークといったところですね。

夏休みの企画満載

東京メトロは、今回の社会科見学ツアーのほかにも夏休みの企画が満載。三井不動産との連携では、メトロ24時間券と三井の商業施設で使えるクーポンをセットして、サービス価格で売り出します。

もう一つのイベントが、「東京メトロ×ダンまちⅣ新章迷宮篇」。スマートフォンを使ったデジタルスタンプラリーで、大人気アニメとタイアップします。

メトロが目指すのは、外出の機会づくり。感染症や熱中症に注意しながら、夏の1日を地下鉄沿線のスモールツーリズムで過ごしてはいかかでしょうか。

記事:上里夏生(写真は全て筆者撮影)

※レポート後編、岩倉高校の鉄道体験は近日中に公開予定です(鉄道チャンネル編集部)

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