<南風>ターニングポイント

 小さい頃の記憶はないが、古いアルバムの中では髪を結ってワンピース姿が多く、意外と女の子っぽい。小学校低学年の頃はおままごと、小学校高学年になると石灰岩が砕けたような舗装されていないゴロゴロ道をTシャツにショートパンツと運動靴で駆け回わり幼なじみの男の子とけんか、「こんなに真っ黒じゃ、ボーイフレンドもできないよ」と言われるほど外遊びに夢中だった。男の子っぽい女の子で確かに真っ黒だったが、そう言われたことに意外と女子心でショックだったことを覚えている。

 今でも鮮明によみがえる。小学6年のある日の放課後、心地よい風に当たりながら校舎2階外階段の踊り場で空を見上げている時「…私、生きてる!」という不思議な感覚を体験した。

 人生のターニングポイントというと、就職・転職・結婚・出産といったイベントもしくは環境の変化をいうのかもしれないけれど、私はこの日を境に自分というものを考え始めた気がする。そして時を重ねた今の私は、人との出会いや本との出合いで思想が変化したり、信念を増やしたりしてきたが、いまだ何度も失敗し、間違え、反省しながら山あり谷ありの正弦曲線を歩んでいる。

 今でもいろんなはざまで多くの課題に悲観的な気持ちになってしまう悩み多き私だが、朝の通勤途中、さとうきび畑と青い空のコントラストが美しい、読谷の景色の中で「天命」という言葉がふと頭に浮かんだ。

 「…私、生かされている?」。私に起こるありとあらゆることは必然で今、やらなければならないことなんだとストンと腹落ちする瞬間だった。これも私の中のターニングポイントなのかもしれない。そう思うのは、この不思議な感覚を信じて出会う人や場所、空間を周りの人と共有し、今という時を一生懸命に生きようと心に決めたからだ。

(澤岻千秋、御菓子御殿専務取締役)

© 株式会社琉球新報社