【特別寄稿】新たな時代へ向けた自己変革力(第3回/全3回)~共通基盤としてのデジタル化~

◆共通基盤としてのデジタル化

 本連載では、2022年版中小企業白書をもとに、新型コロナウイルス感染症や原油・原材料価格の高騰等の外部環境の変化が中小企業・小規模事業者に与えた影響や、企業の成長を促すための取組について紹介してきた。
 事業環境が大きく変化する中、中小企業、小規模事業者の事業継続・成長を支えるインフラ(共通基盤)を整え、経営者に寄り添うことが重要である。こうした観点から、今回の白書では中小企業・小規模事業者の共通基盤として、取引適正化とデジタル化、経営力再構築伴走支援に関する分析や企業事例を紹介している。
 上記のトピックの中で、デジタル化は感染症前から現在に至るまで事業方針における優先順位が年々高まっており、とりわけ重要な経営課題となっている。以上を踏まえ、最終回となる本稿では、デジタル化に絞って白書の内容を紹介する。

◆中小企業におけるデジタル化

 最初に、感染症の影響が長期化した中における、中小企業のデジタル化の取組状況やその効果について確認する。
 今回の白書では、デジタル化の取組状況を4つの段階に分けて、調査対象企業の取組段階を確認した。各段階は、①紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態(段階1)、②アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態(段階2)、③デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態(段階3)、④デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態(段階4)に大別している(第1図)。
 次に、①感染症流行前(2019年時点)、②感染症流行下(2020年時点)、③現在(2021年時点)の3時点別に、デジタル化の取組状況を確認する(第2図)。
 感染症流行前(2019年時点)は、6割以上の企業が段階1~2の状況にあり、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいなかったと推察される。
 その後、感染症流行下(2020年時点)から現在(2021年時点)にかけて、デジタル化により業務効率化などに取り組む事業者(段階3)が増加している。

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 一方で、現在(2021年時点)でも、依然として紙や口頭による業務が中心の事業者(段階1)が一部存在するとともに、デジタル化によるビジネスモデルの変革など、DXに取り組めている事業者(段階4)も約1割にとどまっている。
 最後に、段階2~4の企業における、デジタル化による取組効果(第3図)を見ると、取組段階が高い程、デジタル化による個々の効果を実感する割合が高い結果が出ている。デジタル化の取組を進展させていくことで、競争力の強化に資する多様な効果を得られ、事業を成長させる新たな可能性も期待できると考えられる。

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 以上、3回にわたって白書の内容について説明してきたが、本稿では紹介しきれなかった分析も多数行っているほか、企業の事例も豊富に取り上げている。詳細にご関心のある方はぜひ白書本文もご覧いただければ幸いである。

「2022年版中小企業白書・小規模企業白書」は以下より全文閲覧できます。

 中小企業白書:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html

 小規模企業白書:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/syoukiboindex.html

(著者:中小企業庁 事業環境部 調査室 服平周氏、東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年7月29日号掲載分を再編集)

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