甲子園の切符を手にした県岐阜商/選手たちを盛り立てる“女子だけの応援団”

 高校野球ファンにおなじみの県岐阜商。28日の岐阜大会決勝で延長11回に右翼ポールを直撃するサヨナラ本塁打で帝京大可児に勝利し、2年連続30回目の甲子園出場を決めました。
 伝統校ゆえ、スタンドの応援風景も人気があります。それを指揮する学ランの応援部は今、全国的にも珍しい「女子だけの応援部」。きりっとした雰囲気を漂わせ、やや低めの声を出しながら華麗に舞う彼女たち。その演舞は本当にかっこよかったです!

鬼気迫る、女子17人の応援団(県岐阜商応援部)

県岐阜商〈女子だけの応援部〉STORY

 県岐阜商は1904年創立の伝統校。応援部は1950年に創部されました。バンカラの名残を残しつつ、長らく男子だけで構成されてきました。しかし15年ほど前、部員不足による廃部危機に際し、女子からも部員を募ることに。やがて部員は女子だけになり、現在は17名が学ランに袖を通します。女子だけの応援部に憧れ、入学してくる生徒もいます。
「応援団のない県岐商はありえない」。
 廃部危機の当時、顧問の渡辺信之先生は学校内外のそんな声を訴えながら、今の形をつくってきました。
「男性ができることは大抵、女性もできます。よっぽどの力仕事は別としてね。むしろ、その逆パターンのほうが少ないぐらいかも。応援部に関しても性差はなく、繊細さや統一の美しさがより前面に出ます」
 一方で、こう強調します。
「『女子だけ』という部分を意識するのではなく、応援部として機能することが大切なんです。そもそも、男子の入部を禁じているわけでもありません」
 学ランを着ているときは笑わない、きつくても悔しくても泣かない。そんな“掟”も部にはあります。
「スタンドの数千人を一つにまとめるヤツらが、つまらない感情を出してはいけない。応援はストップできない。それに夏のスタンドは想像以上に過酷です。部員同士が助け合うためにも、やる以上は普段から甘いことは言ってられないです」
 岐阜県の高校野球といえば県岐阜商。スタンドには常に、たくさんの青いメガホンが鳴る光景がありました。今、それを指揮する女子だけの応援部は、勝利の女神ではなく、勝負の鬼としてのかっこよさを帯びています。

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