ロシア宇宙機関、国際宇宙ステーションから2024年以降に撤退する方針

【▲ 国際宇宙ステーション(ISS)の外観。2021年12月撮影(Credit: NASA)】

ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスのユーリ・ボリソフCEOは7月26日、2024年以降に国際宇宙ステーション(ISS)から撤退する方針を、会合の席上でウラジーミル・プーチン大統領に伝えました。ロスコスモスが同日付で明らかにしています。

1998年から建設が始まり、2011年に主な構成要素の組み立てが完了したISSは、国際的な協力体制の下で運用が続けられています。アメリカはISSを2030年まで運用する方針で、民間が主導する滞在ミッションも行われるようになりました。また、太陽電池の経年劣化にともなう発電能力の低下を補うために、新型の太陽電池アレイ「iROSA」を追加する作業も進められています。

関連
初の民間主導ISS滞在ミッション「Ax-1」参加した4名が地球に無事帰還
国際宇宙ステーションの新型太陽電池アレイ「iROSA」2基目の展開も完了

いっぽう、ロシアは独自の宇宙ステーション「ROSS」(Russian Orbital Service Station、直訳すれば「ロシア軌道サービスステーション」)の建設準備を進めていて、ロシア国営のタス通信によれば2024年までに建設が始まる予定とされています。ROSSの運用が始まる前にISSから撤退すれば空白期間が生じることになるため、建設状況に応じてタイミングを調整できるように、2024年「以降」という形で撤退時期が示された可能性もあります。

【▲ ロシアが建設準備を進めている独自の宇宙ステーション「ROSS」(Credit: Roscosmos)】

ニューヨーク・タイムズは7月26日付の記事で、米国家安全保障会議のジョン・カービー報道官の言葉として「2024年以降実際にロシアが撤退する場合に備えて、潜在的な影響を軽減する方法を検討している」と伝えています。

その一環として2022年6月には、ノースロップ・グラマンの無人補給船「シグナス」のエンジンを使ったISSのリブースト(軌道上昇)が実施されています。ISSの姿勢変更や軌道修正は、2011年以降は主にロシアのモジュールや無人補給船のエンジンを使って行われてきました。

関連:ISSのリブーストも実施した無人補給船「シグナス」運用17号機のミッションが終了

ロシアがISSから撤退するのはまだ先であり、それまではISSの共同運用が継続される模様です。ロイターは7月27日付の記事で、NASA有人宇宙飛行部門のキャシー・リーダース局長の言葉として、ROSSの運用が始まるまではISSのパートナーシップを維持したいとする意向がロシア当局からNASAに伝えられたと報じています。

なお、7月15日にはロスコスモスとアメリカ航空宇宙局(NASA)の間で新たなクルー交換(座席交換)の協定が結ばれたことが発表されていて、米ロの宇宙飛行士が2022年秋にそれぞれ相手国の有人宇宙船を使ってISSに向かう予定です。

関連:ロシア宇宙機関が米ロ飛行士の新たなクルー交換とトップの交代を発表

Source

  • Image Credit: NASA, Roscosmos
  • Roscosmos (Telegram)
  • TASS \- From international to national: Russia to leave ISS project after 2024
  • The New York Times \- Russia Says It Will Quit the International Space Station After 2024
  • Reuters \- Russia tells NASA space station pullout less imminent than indicated earlier

文/松村武宏

© 株式会社sorae