「エアコン設定温度28度」はもう古い!真の働き方改革に必要な室温とは?

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あなたが働いている会社のエアコン設定温度はどのくらいだろうか。その温度で快適に働くことができているだろうか。エアコンなどの室内環境を整えることで、効率的に仕事が出来たり、疲れをためにくくなったりするという。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した山根小雪・日経エネルギーNext編集長が、エアコン設定温度の見直しをするタイミングに来ていると強く訴えた。

「28度推奨」に根拠はない?

山根小雪・日経エネルギーNext編集長(以下、山根):なぜ職場のエアコン設定温度が28度になっているか知っていますか?

田畑竜介アナウンサー(以下、田畑):なぜ…?理由はよくわからないなあ…国がそう言っているから?

山根:そう「なんとなく28度」なんですよね。2005年に環境省がクールビズを導入したときに「28度推奨」って言ったんですよ。では28度の根拠って、想像つきますか?

田畑:う~ん。冷房の一番高い温度だから…?

山根:私も調べたんですが、なんとこれ、根拠「ない」んだそうですよ。みんな28度で暑い中で仕事しているのに!

田畑:エビデンスなし!?

山根:2017年頃に当時クールビズを導入したときの環境省の担当課長で、現在衆議院議員の森山将仁さんが、法務副大臣当時、首相官邸であった副大臣会合で、ある出席者から「何で28度に決めたの?」と聞かれた際「いやあ…なんとなく28度っていう目安でスタートして、それが一人歩きしちゃったんだよね」と言っています。これを受けて、当時、官房副長官で今経産大臣の萩生田さんが「もう少し穏やかで根拠のあるものに変えていったらいいよね」と発言し、さらに、当時官房長官の菅さんは「28度を『めどにする』っていうことになっているんだから、皆さんも過ごしやすい温度でもいいんじゃないの」と言っています。当時、報道も含めて盛り上がりましたが、環境省は28度設定を見直すことなく、現在に至っています。

山根:とはいえ、さすがに(根拠は)何もないことはないだろうということで調べてみると、最近出た「現代ビジネス」で「室温28度の罠」という記事を見つけました。この時期になると毎年「28度は暑すぎるんじゃないか」って話が出てくるんですけれども、この記事の中で、空調の温度や労働環境について研究している伊香賀俊治・慶応大学教授が「28度は厚労省が定めている建築物衛生法と労働安全衛生法の中にある事務所衛生基準規則というものに準じているんです」と話しています。どういうことかというと、働く人がたくさんいるような場所は18度から28度じゃないと駄目、これ以上はもう人間は耐えられませんっていう許容限界なんです。

武田伊央アナウンサー:そのギリギリを攻めているんですね。

山根:そうなんです。確かに18度より低かったら寒いですよね。

快適な温度設定で残業時間が大幅に減った

山根:じゃあ、快適にみんなが働きやすい温度ってどれぐらいなのかっていうと、国際基準で「ASHRAE55」というのがあります。アメリカのASHRAEという空調などを研究している学会が出している基準ですが、これだと22度から26度が快適な気温だと記されています。たしかに、人種や性別によって快適な温度はかなり違いますよね。野菜をたくさん食べるのか、お肉をたくさん食べるのかという食生活や筋肉量などによって体感温度って結構違います。そう考えると、28度は国際的な快適と言われる温度からかなり離れた数字ということになります。

山根:さらに、面白い実験結果で、最近注目を集めているものがあるんです。姫路市役所が2019年に「室温と作業効率の関係」を4000人の職員を対象に実験しています。姫路市役所ですから環境省のクールビズ基準に則って28度でやっていたけど、1か月間、25度の冷房にしてどのような変化が起きるのか、職員にアンケートをとって検証しています。そうしたら、光熱費は当時の電気代で7万円増えたという結果になりました。ただ、残業時間が平均2.9時間減ったんです。人件費換算で4000万円相当です。

田畑:ほお~!効率アップしていますね!

山根:つまり、電気料金7万円ケチって節電して、クーラー28度にしたら4000万円損しちゃったっていうことですね。今年は節電要請も出ているし、悩ましいところはあるけれど、エアコンの技術は日進月歩で、どんどん性能が良くなっています。それに、就業時間が長くなると、エアコンの稼働時間も長くなり、その分消費電力量が多くなります。さらに驚くべきことがあって、アンケートに答えた職員の中で「25度の室温設定は、ちょうどよかった」と答えている人は70%、「勤務後の疲労感がかなり軽減された、少し軽減された」と答えている人は83%いるんです。

田畑:働く質がかなり向上しているということですね。

山根:しかも「業務効率はとても向上した、少し向上した」と答えた人は85%、さらに「就業意欲がかなり高まった、やや高まった」と答えている人は83%なんです。よく言う「夏バテ」って、体温調節をつかさどる自律神経が疲弊して起きるんです。その自律神経の働きが悪くなると、いろんなものに対しての意欲が低下しちゃうんですよね。勤務後の疲労感が軽減されたという結果は、健康に対して、28度から25度の室温設定変更がプラスに効いたということだと思うんです。

山根:姫路市職員のインタビューを見ていると「やっぱり役所がやらないと、クールビズの28度設定をやめるっていうことはなかなか民間企業にはできない」という声があります。「でも本当にこれが良い方法なのかどうか、自治体がやった結果、真の働き方改革って何だろうっていうことを考えました」っていうふうにおっしゃっているんですね。

田畑:表面的な電気代の節約ではなく、環境全体を含めて快適な職場環境を作るっていう意味では、コストパフォーマンスも視野に入れた上で、どっちが得なんだってことをしっかり考えないといけませんね。

山根:「夏のエアコンとか暑さとかで、具合悪くなって、やっと夏が終わった」って思うんじゃなくて、夏の間も快適に働ける方がどんなにいいだろうと思うんです。健康で生き生きと効率よく働くのはもちろん、わーっと働いてぱっと仕事終わって、家に帰って家族との時間や自分の趣味の時間も持てて。まだこれから暑くなるこの時期に、昔決めたエアコンの問題をもう1回ちゃんと考えてもいいんじゃないのかと思います。

田畑竜介 Grooooow Up

放送局:RKBラジオ

放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分

出演者:田畑竜介、武田伊央、山根小雪

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