理髪店をリノベーション、1棟貸し切り別邸オープン 湯河原の老舗旅館 温泉街ににぎわいを

理髪店を改装した源泉上野屋の別邸=湯河原町宮上

 経営者らの高齢化で店じまいが続く温泉街を元気づけようと、江戸時代から続く湯河原町の老舗宿「源泉上野屋」(同町宮上)が28日、1棟貸し切りで泊まれる別邸を本館近くにオープンした。営業を終えた理髪店を改装し、温泉街の情緒漂う景観を崩さないようリノベーション。プランは素泊まりにこだわり、室伏常夫社長(72)は「宿泊ついでに散歩して、飲食店や温泉を巡ってほしい」と呼びかけている。

 旅館が立ち並ぶ同町宮上の「湯元通り」。全長約200メートルほどで道幅の狭い町道だが、昭和の最盛期には約10軒の旅館のほか、土産物店や飲食店などがにぎわい、観光客らが温泉かご片手に行き交う姿が見られたという。

 「私の幼少期は昼夜問わず観光客が多くいた記憶があり、通りには思い入れがある」と室伏社長。ただ、店主らの高齢化などで平成期以降は旅館数が減少し、今では人通りもまばらになっている。

 そうした中、町は通りを再び活性化させようと2015年に「湯元通りまちなみ協定」を締結。まちづくりプランナーからの指導を受けながら外壁の色彩を統一させるなど、温泉街特有の景観を改善する試みを続けてきた。

 「観光客と町の人々が交流する湯元通りを復活させたい」。別邸の構想を練り始めた室伏社長は昨年、同宿近くでシャッターを下ろしたままだった理髪店を譲ってもらい、リノベーションすることを決めた。

 オープンした別邸は、家族連れや仲間同士など最大6人で1棟貸し切って泊まれる木造2階建て(延べ床面積約80平方メートル)で、外観にはわら素材が入ったしっくいや木材をふんだんに使い、温かさを演出した。また室内には同町の光彫り作家の風景画作品を7点飾るなど、湯河原の魅力を詰め込んだという。

 問い合わせは源泉上野屋電話0465(62)2155。

© 株式会社神奈川新聞社