月面探査に福井の技術…国プロジェクトに坂井市の企業参画 インフラ無人設営技術を開発へ

サカセ・アドテックが開発し、JAXAの革新的衛星技術実証3号機に搭載する薄膜の展開構造物(同社提供)

 宇宙での薄膜構造物の展開で独自技術を持つサカセ・アドテック(本社福井県坂井市丸岡町下安田、酒井慶治社長)が、月面に探査拠点の建設を目指す国のプロジェクトに参画することが決まった。ゼネコン大手の大林組(東京)などと組み、月面での発電インフラなどの無人設営に向けた技術開発に着手する。年内には別のプロジェクトでサカセが開発した薄膜展開構造物を搭載した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型衛星も打ち上がる予定で、作動状況を実証し、月面プロジェクトに生かしていきたい考え。

 サカセが参画したのは、国の「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」の一環で、月面拠点整備に向け国土交通省が無人建設の革新的な技術開発を推進するプロジェクト。2030年ごろの無人拠点建設、35年ごろの有人常時滞在を目指している。

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 プロジェクトは10テーマに分かれ、このうちサカセは大林組やJAXA、室蘭工業大学と共同で、発電や通信などのインフラ設備、防護シェルター、居住スペースの無人設営に向けた技術開発を進める。今月からチームが本格始動した。

 サカセの独自技術は、人工衛星などに搭載してコンパクトに収納した軽量の薄膜構造物を、宇宙空間で自己伸展や電動などで展開する技術。その一つは、ホースのように巻き付けて収納した4本の円筒形の炭素繊維強化プラスチックが宇宙で伸びて棒状になり、それに伴って樹脂製の薄膜が1メートル四方の正方形に広がる仕組み。年内に打ち上げ予定のJAXAの小型衛星「革新的衛星技術実証3号機」に搭載され、実証を行う。

 薄膜にはJAXAと共同研究している薄膜太陽電池や、東工大が研究する次世代通信規格「5G」アンテナなどが貼り付けられ、発電や通信状況を確認する。薄膜太陽電池が実用化できれば、宇宙環境で重さ1キロ当たりの出力200ワットという世界最大の発電が可能になるという。

 サカセの酒井良次専務は国交省のプロジェクト参画について「月面での開発にはまず発電や通信ができるインフラが必要で、軽量、コンパクトさも求められる。薄膜太陽電池の展開構造物といった当社の技術が生かされるので、貢献していきたい」と話している。

 政府の月面プロジェクト 政府は米国主導の月探査「アルテミス計画」への参加を表明し、2020年代後半の日本人宇宙飛行士による月面着陸を目指している。20年度に創設した「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」では宇宙開発利用推進費を予算計上し、月面開発に取り組む民間企業を支援。サカセ・アドテックの参画プロジェクトは、初期段階の月面基地建設が主な技術開発分野となる。

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