赤字公表のJR烏山線、利用者は「ないと不便」「本数増やして」

代替輸送のバスから降りてきた電車利用者ら=28日午後、JR烏山駅

 JR東日本が利用者の少ない地方路線の収支を初めて公表した28日、栃木県内で唯一該当した烏山線の利用者らからは、廃線を懸念する声や運行状況に改善を求める声が上がった。一方、那須烏山市の担当者は危機感を強め「路線を次世代に引き継ぐため利用向上に努める」とした。

 この日、大雨のため上下線で運転を見合わせ、16時過ぎに烏山駅に着いた代替輸送のバスからは高校生ら十数人が降りた。宇都宮白楊高1年佐藤陽華(さとうはるか)さん(15)は「赤字は分かるが、電車がないと不便になる。混雑する時間帯もあり、運行本数も車両数も増やしてほしい」と語った。

 高根沢高1年檜山晴加(ひやまはるか)さん(16)は下校時間帯の電車がなく、毎日2時間ほど待たなければならない。「今でも本数を増やしてほしいのに、なくなったら親に送り迎えしてもらうしかない」と困惑した。

 1日当たりの平均乗客数は33年間で半分以下になった。駅前で川魚などを販売する「川魚水井」の水井雅人(みずいまさと)さん(49)は「学生のための電車になっており、平日の昼間は閑散としている」と話す。観光客に、IC乗車券が使えないなど使い勝手の悪さを指摘する声もあるという。「観光のためにもぜひ残ってほしい」と力を込めた。

 那須烏山市まちづくり課の大谷光幸(おおやみつゆき)課長(53)は「収支の厳しさが明らかとなり、改めて危機感を強めた」と話した。

 JRが情報を開示した狙いを「このままでは路線維持が厳しくなることを認識してほしいということ」と受け止める一方、「通勤通学や生活の足として烏山線は不可欠」と強調する。

 烏山線は来春、全線開業100年を迎える。市は市民ぐるみのイベントを実施、計画しており「路線を引き継ぐのが使命。市民と危機感を共有し、利用向上に一層努める」と語った。

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