「崩壊すると無法地帯に」寺田総理補佐官に聞く 核軍縮 来週からNPT再検討会議

ロシアによる軍事侵攻で核兵器の脅威が具体化した中、来週からNPT(核拡散防止条約)の再検討会議がニューヨークで開催されます。会議で各国との交渉実務を担う寺田稔総理補佐官がRCCのインタビューに応じ、「核軍縮の具体的な手順を提案して合意を得たい」と意気込みを語りました。

寺田稔 総理補佐官
「NPT体制が崩壊すると無法地帯に陥るわけですね。軍拡が進む、核の軍拡も進む、そして核の拡散も進む。それだけ人類に対する危機が非常に高まってしまいます」

RCC

寺田総理補佐官は被爆2世。母親は、原爆投下当日から両親を探しに広島市中心部に入り、入市被爆しました。黒い雨も浴びたといいます。

□ NPT再検討会議 日本政府の目標は

RCC

寺田稔 総理補佐官
「核兵器というのは今後も使わないという、まずは核の不使用ですね、不使用を続けましょうと。これをまず最低限、合意をとりたい」

実に191の国と地域が参加するNPTの再検討会議。しかし、前回2015年は、イランの核問題などのため、交渉が決裂し、最終文書はまとめられませんでした。

RCC

NPTを “国際的な核軍縮不拡散体制の礎石” と位置付ける日本政府にとって正念場となります。

RCC

寺田稔 総理補佐官
「ただ口で核兵器国が核軍縮をやるという口約束でなく、具体的な手順ですね、われわれはそれをロードマップと呼んでおります。将来は、核兵器なき世界、現状はしかし核兵器ある世界ですよね。どうやって段階論であれ実現していくかと。CTBT(包括的核実験禁止条約)であるとか、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の交渉開始であるとか、具体論として提案しております。それは、ぜひ合意につなげればと思います」

□ 核保有5国の共同声明 「核戦争に勝者はない」 1月

RCC

寺田稔 総理補佐官
「ロシアも含めてですね、核軍縮もやるし、核弾頭も減らすし、ちゃんと公表して進めていくということについてはいったん合意をしていたという事実もありますから。みなさん、そういうこと合意しましたよねと、強く核保有国には迫っていきたい。幸い、START(戦略核兵器削減条約)という米ロ間の核弾頭数を減らす交渉が再開されています。この米ロの枠組みに中国も加えると。これによって中国もちゃんと減らしましょうねということですね。もちろん核大国ということではイギリスとフランスも存在しますが、イギリス・フランスはアメリカに追随すると言っていますから」

□ 核兵器禁止条約との関係

RCC

6月に開かれた初めての核兵器禁止条約締約国会議では、NPT(核拡散防止条約)との相互補完性が強調されました。

RCC

「これは、われわれも非常に多とするところであります。核禁グループもNPTにも入っているんですね。ぜひ、NPTの場で強く核兵器国に対してプレッシャーをかけてほしいですし。ただ、あまり対決の構図になって、お互いの非難合戦にしてしまうとまとまりませんから相互補完性ということはですね、お互いががんばっていきましょうと、ある意味、連携がとれるわけですね。連携をとるべき場が、両方が参加しているNPTの場だと思いますね。」

□ 懸念の1つがイラン核開発疑惑

RCC

寺田稔 総理補佐官
「IAEAは査察に入ろうとしたが、まだ実現できていない。イランの問題が重大、深刻かもしれませんね。ただイランの問題だけに拘泥していると全体の合意ができませんからね。ここも難しいところですね」

□ 各国リーダーの被爆地訪問

RCC

寺田稔 総理補佐官
「核被害を受けた唯一の国、唯一の戦争被爆国ですから、被爆はこんなに悲惨なんだという実態はぜひ、各国のリーダーに見てもらって、核兵器は決して使ってはならない、人道上も使ってはならない兵器ということが共通認識として生ずればですね、非常に核なき世界に向けて歩みに弾みがつくと思います」

RCC

会期は8月1日から26日までの長丁場。寺田総理補佐官は、核兵器数の削減や拡散防止のチェック体制などでの合意を目指し、最終文書の作成に向けて各国との交渉に当たります。

RCC

― NPTは、核兵器を保有する5つの国に「誠実な軍縮交渉」を義務づけています。しかし、それが果たされていないという不信感が核兵器禁止条約につながったと言えます。NPTが崩壊してしまわないよう日本はしっかり橋渡し役を果たしてほしいところです。

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