「親になったつもりで」子どもを育てるように街を美しく 住民や企業が公園や道路などを“管理”【SDGs】

社会情勢の変化や少子高齢化が進んだことで、公園や道路など公共の場所の整備に多くの費用をかけるのが難しくなっています。静岡県藤枝市は、市民や企業を「里親」として認定し、公共の場所を美しくする仕組みをおよそ20年前から取り入れています。

<篠原大和記者>

「藤枝市役所です。駐車場の花壇ではヒマワリなどが見頃を迎えています」

ミニヒマワリにアメリカフヨウ。夏の花が元気いっぱいに咲いています。全ての花を見やすいようにレイアウトした市役所自慢の花壇です。花壇は市民がボランティアで管理しています。

<笑の会 大石時子さん>

「私たちは笑の会という花の会。私たちが里親になったつもりで花を育てています」

笑の会は、藤枝市の「まち美化里親制度」に参加しています。「まち美化里親制度」は、公園や道路などの公共施設を「子ども」に見立て、市民団体や地元の企業などが「里親」となり、我が子を育てるように清掃・美化する取り組みです。

勝隆さんです。勝さんは、5年前マンションの住民と「メゾン駿河台花の会」を立ち上げました。

<勝 隆さん>

「花が周囲に少なかったので一本でも多く植えようと勝手に始めました」

<メゾン駿河台花の会 会員>

「ここを散歩する方、通勤で通る方が『綺麗だね』と声をかけてくれるのが嬉しい」

「親の気持ちで花を育てたいと思っています」

メゾン駿河台花の会は7月、まち美化里親制度に参加しました。参加団体への支援として、藤枝市は毎年1万円を上限に活動で使用する道具などの費用を補助。希望者はボランティア活動保険に市の負担で入ることができます。

<勝 隆さん>

「自費だけまかないきれない」「援助していただくことで(活動が)継続できる要因になっている」

市民の力を借りることで行政の課題の解決にもつながります。

<藤枝市 市民活動団体支援室 杉本智美さん>

「行政だけで全ての道や公共施設を整備しようと思うと、どうしても人手が足りなくて。地元の方が手を尽くしてくださることで、花や緑があふれる藤枝市が実現できていると思う。とても感謝しています」

行政と市民が一緒になってまちづくりを行うこの制度は今年で20年目をむかえ、現在は60団体、2000人以上が登録しています。市民や企業にとっては正式に認められた団体として活動できることでやりがいにつながるといいます。

藤枝市内の福祉事業所です。主に知的障害のある人が利用するこの施設もまち美化里親制度に参加しています。施設の利用者は週に1度、近所の公園に向かいます。草取りや遊具の清掃、ときにはペンキ塗りを親の気持ちになって作業します。

<社会福祉法人愛誠会ワーク稲川 織田洋輔 生活支援員>

「地域の方に声をかけていただいて利用者さんも地域の方と会話をしてコミュニケーションをとることができています。特別な活動なので(みなさん)出かけるときは楽しみにしています。利用者さんも職員も含めてやりがいを持って取り組めています」

市民の協力に市長も感謝しています。

<北村正平 藤枝市長>

「里親制度は20年目になる。地域の人たちが自分たちの地域を愛するというたいへん熱い想いで成り立っている。みなさんのそういう気持ち、たいへん大事で、誇らしく思っています」

20年目をむかえた「まち美化里親制度」。子を見る親のような気持ちで、美しく、暮らしやすいまちをみんなでつくる取り組みです。

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