「土石流対応を投げ出そうと考えたことはない」斉藤栄熱海市長が5選目指し立候補表明 市議も名乗り上げ選挙戦確実に

2022年9月に任期満了を迎える静岡県熱海市長選挙に現職の斉藤栄市長が、5選を目指して立候補することを表明しました。2021年7月に発生した土石流への対応について「途中で投げ出そうと考えたことはない」と訴えました。

<熱海市 斉藤栄市長>

「伊豆山の復興は自分の責務と考えている。引き続き、課題に取り組むため、9月の市長選に立候補したいと考えている」

熱海市の斉藤栄市長は7月29日の定例記者会見で、9月に任期満了を迎える市長選挙に立候補することを表明しました。

斉藤市長は、東京都生まれの現在59歳。国土交通省の官僚や国会議員秘書などを経て2006年の市長選挙に初当選し、4期16年にわたり熱海市政を担ってきました。

斉藤市長はこれまでの16年間で、市が抱えていた不良債権を減らしたり、低迷していた観光客も2015年には300万人を超えるなど、観光地熱海の再生に取り組んできました。

しかし、今回の土石流災害では、過去にさかのぼって行政対応の不備が明るみになるなど、批判も出ています。

<斉藤市長>

「伊豆山の問題を途中で投げ出すことはこれまで考えたことはありません」

斉藤市長は伊豆山地区の復旧復興を最大の課題としたほか、新型コロナ対策、観光再生に向けた取り組みなどの継続を訴え、5期目を目指す考えを示しました。

一方、熱海市長選挙には、熱海市議の泉明寺みずほさん51歳もすでに出馬を表明しています。泉明寺さんは、函南町出身、熱海市の今宮神社の宮司を務めていて、2015年の市議会議員選挙で初当選し、現在2期目です。

<泉明寺みずほ 熱海市議>

「市として、市長として、この責任を回避することは絶対にできないと思う」

土石流災害での現市長の対応を批判し、土石流の責任を明らかにする、被災者の生活再建について対話を重ねるとしているほか、市長の多選自粛条例の制定を公約に掲げ、斉藤市長の多選を問題視して、市政刷新の必要を訴えています。

現職の斉藤市長が出馬を表明し、2人が立候補を表明した事になった熱海市長選挙。泉明寺市議が現職批判をする上で掲げているのが土石流災害への対応です。選挙の争点になるとみられ、熱海市の最大の課題といえるのが伊豆山の復旧復興や土石流災害をめぐる行政対応の検証です。

土石流災害を甚大化させたと指摘されているのが違法に造成された盛り土です。土石流災害における熱海市と静岡県の対応を検証した第三者委員会の報告では、盛り土の造成をめぐり不備のある届け出を受理していたことや、熱海市が業者に対して強制力のある措置命令を見送っていたことなどが明らかになり、「行政対応は失敗だった」と結論付けられました。

また、熱海市は土石流災害をめぐる裁判の被告にもなっています。

<被害者の会 瀬下雄史会長>

「過失に関しては、静岡県、熱海市。7:3もしくは8:2で熱海市に過失が大きいと考えている」

遺族や被災者は熱海市を相手取り、不適切な盛り土の造成を許し、危険性を認識していたのに放置していたなどとして損害賠償を求めています。さらに、伊豆山地区の復興計画についても、警戒区域内に家がある人の意見が反映されていないなどの批判を受けていて、被災者への行政対応が課題となっています。

次の市長に求められるのは、土石流災害をめぐる一連の課題と向き合うこと、そして被災者をはじめとした市民の声にこれまで以上に耳を傾ける事です。

熱海市長選挙は9月4日に告示、11日に投開票されます。

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