観光地の「安全」は誰が守るべきなのか――知床・観光船沈没事故の教訓を考える

STV札幌テレビ放送で7月31日にどさんこドキュメント「『見過ごされた安全』~知床に沈んだ観光船~」(午前5:45、北海道ローカル)が放送。4月、北海道の知床半島沖で観光船が沈没した。同番組では関係者や斜里町・馬場隆町長へのインタビュー、観光船の安全を守るための他地域の取り組みなどを紹介しながら、悲惨な事故を繰り返さないために何が必要なのかを考える。

世界自然遺産・知床で4月23日、乗客乗員26人が乗った観光船「KAZUⅠ」が海の底へと沈んだ事故から3カ月。今も行方が分からない乗客の家族は、遺留品を眺めながら悲痛な思いを語る。

知床の海は昔から“魔の海域”と呼ばれ、恐れられてきた。他社や漁船が出航を見合わせる中での“単独・条件付き出航”。その後、運航会社には数々の不備が見つかった。

知床の海を知る人たちは「なぜ、あの気象条件で遊覧船を出したのか」と口をそろえて話す。実は世界自然遺産に登録された2005年以前、知床は“プロの旅人”が訪れる場所だった。しかし、登録後は観光客でにぎわい、「知床ブランド」にビジネスチャンスを見いだした観光事業者が急増。斜里町は「観光船事業」を「漁業」「農業」と並ぶ三本柱の産業に掲げ、“観光のマチ”をアピールしてきた。

ただ、「観光船事業」は季節に影響するため、経営が不安定で事業を手放す人もいた。そうした中、ホテル業を営んでいた桂田精一社長が“周遊観光スタイル”の構築を目指し、観光船事業を引き受けたのが「知床遊覧船」の始まりだ。

知床岬沖では56年前、2隻のイカ釣り漁船が転覆し、26人が犠牲となった。地元・ウトロには石碑が建てられ、岬先端には「文吉港」と呼ばれる避難港もある。こうした出来事を踏まえ、海に関わる人は“どやす”と呼ばれる特有の凪(なぎ)を感じながら危険を察知しているという。ところが今回、その教訓を生かすことはできなかった。

“観光のマチ”の安全・安心は、誰がどのように守っていくべきなのか。現状の課題と展望に迫る。

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