廃木材に新たな命を…地元の木を地元で製材、おもちゃなどに 川口の木工業者ら「マチノキ・プロジェクト」

製材機の前で、マチノキプロジェクトのメンバーたち。左から2人目が小松和人さん=2日、埼玉県川口市石神

 「川口の捨てられる木を製材して家具などに再生しよう」。市内の木工工場の社長たちが廃棄処分された丸太を製品に活用する一般社団法人マチノキ・プロジェクトを立ち上げた。大きな夢へ向けて第一歩となる小さな製材機が今月、初めて動き出した。市内で伐採された丸太材を板や角材に製材して、おもちゃや家具を作る。正真正銘のメード・イン・川口だ。

■第1号の板

 市内でも緑が多い同市石神、伐採樹木を造園業者などから引き受けるリサイクル会社「日生グリーン」の一角で米国製小型製材機が動き出した。市内の寺の林から伐採された推定樹齢60年、直径約60センチのクヌギの丸太から板を切り始め、木くずの煙が上がった。

 火付け役、木製おもちゃで知られる「こまむぐ」の小松和人さん(41)が、切り出した板を掲げ「皆さん、この板が川口市原産の木材第1号です」。「川口原産の丸太で、どこにもないオリジナルのグッズを市民に提供したい。一緒にやらないか」という小松さんの呼びかけに、市内の木工工場の社長ら5人が応じた。7月1日に一般社団法人が発足し、翌2日に製材機を動かすスタートアップイベントにこぎ着けた。

■年間2万トン

 日生グリーンの大谷和也社長(36)は「当社では年間2万トンの木を引き受ける。ほとんどが焼却かチップ原料に。もったいない。有効活用したいと思っていた」と言う。

 大谷さんと小松さんをつないだのが川口商工会議所経営指導員の小林貴洋さん(36)。「会ってみませんか」と勧め、2人は意気投合。クラウドファンディング(CF)で資金を集め、製材機械を買った。

 丸太があっても、秩父や茨城県へ運ばなければ製材できない。製材機があれば、川口の丸太を川口で加工できる。

■キカラ

 呼びかけに集まった木工の5社でグループ「キカラ」も立ち上げた。サンアーム工芸社の川崎果夢生さん(43)は「僕らの情熱と知恵でいいものを作る」。新堀工芸の新垣肇樹さん(36)は「捨てられた木に命を吹き込んで市民に届けたい」と意気盛んだ。

 素(す)ファクトリーの川崎研さん(50)、原田木型製作所の初芝久嘉さん(54)、HALFAの広瀬敦さん(42)も「夢を感じる」と口をそろえる。みんな社長級だが、ものづくりに誇りと自信のある技も持つ職人。将来、みんなで一つのものを作ることも目標に据えた。

■森を創る

 クラウドファンディングで集めた150万円でアメリカに注文した製材機は今年2月に届いたが、組み立て方が難しい。小松さんと大谷さんは途方に暮れた。救ったのがキカラの仲間たち。みんなで4カ月かけ機械を組み立てた。

 炎天下で勢いよく木くずを吹き出し板を切るマシンをみんなが見つめていた。小学生と一緒にドングリの実を拾い、苗を育て、森を創る活動も視野に入っている。夢は膨らむばかりだ。

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