フィギュアの景気が良かった時代
コレクションを始めて40年になる。
コレクションを始めた頃、キャラクター物のコアなアイテムなど存在しなかった。マニアな人達の世界は受け入れられず、一部の人達がこっそりやっている、そんな暗黒の時代だった。
コレクターという世界は骨董の壺や掛け軸や絵画など、所謂骨董品店や画廊で売られているもので、切手を集めているというと子供扱いされるような面もあった。アニメや特撮マニアが市民権を得られたのは90年代に入ってからだろう。
80年代から徐々に盛り上がり表面化してきたが、宮崎勉事件があり「アニメ&特撮好きは危ない人」「気持ち悪い人」として見られる傾向もあった。
そういった世間のイメージをキャラクター化したのがオタク評論家の宅八郎さんだった。もちろん宅さんも世間から「気持ち悪い」と見られていたので、そういった部分をわざと誇張していたりもした。
チョコエッグ、ペットボトルのボトルキャップなどが一般的になって来ると、マニアックな世界が世間一般に受け入れられ出し「フィギュアを集めています」と公言する人が増えて来た。
そうなると、メジャーなキャラクターだけでは物足りなくなって来て、よりマイナーなものを求め出し、グッズもどんどんと増えていく。
フィギュアの景気が良かった時は、等身大フィギュアを発売するメーカーが増えだし、綾波レイ(エヴァンゲリオン)や森雪(宇宙戦艦ヤマト)の等身大フィギュアが大人気だった。
知り合いのメーカーでは、等身大・山田太郎(ドカベン)を発売し一個も売れなかったなんて事もあった。(笑)
プロップとプロップ風レプリカは違う!
現在では、コレクターアイテムとして良質な物が手に入りやすくなって来ている。
ただし、全てが良質とも限らないのでご注意あれ。有名会社のオークションでも本物と記載されていても贋作もあったりするので、物が増えると共に鑑定人も増え専門職ではなくなっているように思われる。
その証拠に、某オークションサイトでもショップでもロボット刑事Kの1/1マスクが売られる事があり「プロップレプリカ」と説明書きが付いているのだが、そのマスクはプロップレプリカではなくプロップ風レプリカなのだ。
なぜそう言い切れるのかと言うと、その原型を作ったのは自分だからである。油粘土で原型を作り、プロップと同じFRPで作った。
そのマスクが誰かの手に渡りコピーにコピーを重ねていったというのが現状である。
コレクターには本物志向の人も多く、ある時からプロップレプリカが発売される事が多くなってきた。
だが、これが厄介なのだ。プロップとプロップ風レプリカではえらい違いで、それらが一緒くたになって“プロップレプリカ”になっているから困る。自分のようにオリジナルモールドに拘っている人間には決して愉快な事ではないのだ。
がっかりだったアイアンマンの胸像
今回はプロップレプリカの中から等身大胸像を紹介しよう。
まずはアイアンマンから。サイドショウから発売されたアイアンマン・マーク3の胸像。サイドショウからアイアンマンの胸像はいくつか発売されているが、個人的にマーク3のダメージバージョンが一番良く出来ていると思っている。塗装も実に良い。
でも、若干小さい。これは量産品の縮みだと思う。ノーダメージバージョンも発売れているが、塗装が駄目。ダメージバージョン・マーク3が良かったのでマーク7を買ってみたら駄目だった。
何が駄目かと言うと、エッジや溝などが緩い。発売前の商品サンプル写真は実に見事なのに!
ハリウッドに行った時、Legacyeffectsを見学した。Legacyeffectsは特殊造形の会社で、映画で使われるプロップを作っている工房だ。撮影用アイアンマンもLegacyeffectsで作られていて、サイドショウ発売のアイアンマンもここでサンプル原型を作っている。
見学した時にサイジョショウのアイアンマンの事を聞くと、撮影用アイアンマンを担当した人が作っているので本物だという説明を聞いた。
アイアンマンはデータを使ってモックアップを作っているので、データさえあれば本物と同じものが作れる。
あとは仕上げの問題だが、アイアンマン担当者が作ればオリジナルと同じものが作れる。Legacyeffectsでサイドショウ用のサンプル原型を見た時、理想的なアイアンマンだったので帰国後早速注文した。
ところが届いたものは残念なアイアンマンだった。
塗装も悪い、表面もボコボコ、エッジも溝もユルユルだった。中国の工房で量産されるとここまで質が落ちるものなのか?
困難な良し悪しの見分け
OGRM製ターミネーター2のT-800、エンドスケルトンの胸像はメッキ仕上げで実に見事だ。ライフサイズのプロップレプリカではあるが、難点もある。
まず、下を向きすぎている。高い所に置けばT-800が自分を見下ろす感じで良いかもしれないが、それにしても、である。
そして一番の難点は、頭の幅が細いという事だ。撮影用プロップの中でも電飾入りグレードの高いものを手に取って見た事が何度もあるが、頭の幅が全然違う。
原型を抜いた時か量産する時に頭の縮みが出てしまったのだろう。オリジナルを型取りし樹脂で抜く時は、縮みや引けや歪みが出にくい素材と技術が必要。そういった技術無しで原型を作ると悲劇でしかなくなる。
CoolPropsのウルトラマンゼロの胸像は製品になっても素晴らしい出来だ。円谷プロにあるウルトラマンゼロの胸像をスキャニングしサイズにも拘って作っている。
CoolPropsとサイドショウの中国工場は同じだそうだ。
ちゃんと打ち合わせをし、現地で指示を出しダメ出しさえしっかりやれば、ちゃんとしたものが出来るという証明だ。アイアンマンもこれくらいちゃんと作ってくれていれば最高に良いものが出来るのに。サンプルは本物そのものなのだから。
ライフサイズのプロップレプリカの良し悪しを見分けるのは本当に大変だ。プロップレプリカとプロップ風レプリカを区別する所から入り、品質を見極める。でもね、サンプル画像に騙されちゃうのだよね。
予約発売はあっという間に品切れになってしまうから焦ってクリックしてしまうし、製品が届くまで1年~2年かかるものもあるから。何でも手に入る時代になっても、困難は付きもの。つくづくそれを感じてしまう。