<社説>全国学力テスト 学ぶ環境を整えよう

 全国の小6と中3を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が公表された。沖縄の子どもたちは小6の国語、算数、理科、中3の国語が全国並みだった。 一方で中3の数学は正答率が全国平均を9.4ポイント下回った。同理科も全国平均より5.3ポイント低かった。コロナ禍により登校日数の減少が影響したのは間違いないが、子どもたちの学習環境が十分に保障されたか検証が必要だ。

 子どもたちの学ぶ権利を守るためにも、学習環境を整えるのは行政や保護者に課せられた重大な責務である。

 今回の全国学力テストでは全国的にも算数、数学、理科の平均正答率が低下した。文部科学省は、休校が長くても比較的高い正答率の学校もあることから、休校日数と正答率に相関関係はないという見方を示している。

 だが数式の説明や理科の実験など理解を深めるのに有効な対面式授業が減った影響は否定できない。全国では理科の実験・観察をほぼ行わない学校が中学で1.4%あり、4年前の調査の4倍に上る。

 数学、理科が苦手な子どもにとって、対面式授業による教師の指導や実験は学びへの好奇心、学習意欲を生む重要なきっかけだ。

 特に沖縄では新型コロナウイルスの感染拡大により、2021年度はたびたび登校制限などがあった。臨時休校日数が10日未満なのは、全国平均で小中とも94%台だが、沖縄は小学校37%、中学校46%で、10日以上休校があった小中は5~6割近くに上る。

 さらに登校を制限する代わりに導入を試みた遠隔授業も成功したとは言い難い。

 那覇市では21年8月に臨時休校に伴う代替措置としてオンライン授業を実施したが、通信障害などで24校が延期を余儀なくされた。

 那覇市や沖縄市、浦添市などは通信機器の貸与など対策を取るが、そもそも自宅にインターネット環境が整っていないという家庭もある。

 調査では家庭の経済状況が厳しく給食費補助などを受ける就学援助の割合も調べている。沖縄は就学援助を受ける割合が全国に比べて高い。全国の2倍ともいわれる子どもの貧困は、保護者の貧困でもある。家庭教育の重要性は指摘されるが、保護者だけで解決できない課題もある。教育費の完全無償化など学習環境整備を手助けする行政の積極的な支援が求められている。

 調査結果から分かるのは、沖縄の子どもの80%超が「学校が好き」と答えており、学ぶ意欲にあふれていることだ。学校や学ぶこと自体が嫌なのでない。問われているのは、子どもたちの意欲にどう大人が応えていくかだ。

 学びとは、テストの点数や順位を競うものではない。知識を蓄え、個々の可能性を広げるためにある。学習環境を整えることは、子どもたちの可能性を狭めないため、われわれ大人に課された責任だ。

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