安倍元首相「国葬」 反対75% 賛成21% 森友、加計問題など不信感根強く/最長在任、外交手腕を評価

 政府が閣議決定した安倍晋三元首相の国葬について、長崎新聞社は7月25、26の両日、読者との双方向情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)で賛否を尋ねるアンケートを実施した。1040人から回答があり、「反対」「どちらかというと反対」が計75.6%に上り、「賛成」「どちらかというと賛成」の計21.3%を大きく上回った。森友、加計両学園、桜を見る会といった諸問題への不信感が根強く、国葬の基準が明確でないとして国費(税金)を投入することへの批判が目立った。
 アンケートはナガサキポストに「友だち」登録している人を対象に実施。無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なる。スマートフォンを持っていないなどの理由で登録できない読者も一部いたため、記者らが回答を聞き取り集計に加えた。
 回答者の内訳は男性54.3%、女性45.2%。年代別では60代が32.2%、50代が25.6%と多く、70代16.3%、40代14.5%、30代7.3%、20代2.2%、80代1.2%、10代0.7%、90代以上0.1%の順。10代を除く各世代で“反対派”が“賛成派”を上回った。
 反対の理由は、森友、加計両学園、桜を見る会の問題について「(安倍氏や政府の)虚偽答弁や不誠実な対応は国民に大きな政治不信を招いた」(長崎市・50代会社員男性)といった批判が多かった。
 憲法解釈変更による集団的自衛権行使の一部容認などは「国会で議論を尽くしたとは言えない。強引な政権運営は民主主義を軽んじた」(諫早市・60代主婦)との指摘も。安倍氏銃撃事件をきっかけに浮上した宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と政治家の関係への疑念もあった。
 岸田文雄首相が「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」と訴えていることについても、「安倍氏の政治的信条に対して起きた事件ではない」(長崎市・40代公務員男性)などと疑問視する意見が複数あった。新型コロナウイルス禍で国民生活が苦しい時期に税金で弔うことや、国葬の基準の不明確さなど岸田政権への不満も目立ち、「国費で賄うと弔意の強制につながる」(同市・60代無職男性)、「安倍氏を神格化する動き」(同市・50代会社員男性)との懸念もあった。
 一方、賛成の理由は憲政史上最長の首相在任期間(8年8カ月)や外交手腕を評価する声が多かった。「史上最長の在任期間の総理大臣に対し国が敬意を表すのは当然」(佐世保市・40代会社員男性)、「日本の政治、外交、発展に多大な貢献をした」(同市・30代公務員女性)、「国の威信を高めた。国葬にすることで弔問外交が展開され価値がある」(長崎市・60代男性)などの意見が聞かれた。
 また「分からない・どちらでもない」と回答した人は3.2%。「なぜ自民党と有志の葬儀にせず国葬にするのかしっかり説明してほしい」(大村市・50代自営業女性)との要望もあった。


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