フェラーリ初の電気自動車(EV)2025年に登場、今年創立75周年「運転感情」味わえる車を作り続ける   ベネデット・ビニャCEOインタビュー「無人運転車開発には興味ない」

 創立75周年を迎えたイタリアの高級車メーカー、フェラーリのベネデット・ビニャ最高経営責任者(CEO)が北部マラネッロの本社で共同通信のインタビューに応じた。2025年にフェラーリ初の電気自動車(EV)を発売すると述べて「運転感情を味わえる、ユニークな車の生産を継続する」と強調し「顧客はフェラーリ車だからこそ運転して味わえる『感情』を体験したい」と話し、無人運転者開発には興味がないと明言した。(共同通信=ダビデ・コメット)

 

フェラーリのビニャCEO=6月15日、イタリア北部マラネッロ(ロイター=共同)

―日本とそのマーケットに関してどのように考えているか

 「私は日本が大好きで、これまでに143回訪れました。日本は一般的にイタリア文化と強いつながりがあり、フェラーリにとっても日本の市場が極めて重要であることは確かです。我が社では革新や技術、デザイン、スタイル、イタリアの芸術性など、フェラーリのあらゆる特性を日本に提供できるように取り組んでいます。日本のお客さんはフェラーリを高く格付けしていて、そのDNAがユニークに評価されている国だと思います」

 ―近い将来に内燃機関車が生産中止となる可能性について

 「75周年イベントで発表したように、2025年にはフェラーリ初の電気自動車(EV)を紹介する予定で、2030年には販売台数の2割が(ガソリン車などの)内燃機関車、8割がEVとハイブリッド車になることを想定しています。さまざまな選択肢を提供する中で、最高の駆動力(を持った車)をお客様に選択してもらいたいのです。お客様の好みを私たちが決めることはできません。お客様を中心に置いて、尊重するのがフェラーリの特性です。ユニークなフェラーリ車を生産することが私たちにとって必要であり重要だと考えています。フェラーリでは、無人運転車用ソフトウェアを開発することには興味がありません。顧客はフェラーリ車だからこそ運転して味わえる『感情』を体験したいのです。自動運転車に乗り、走行中に新聞を読むことなど望んでいないのです。私たちはフェラーリ流によって、ユニークな方法で電動化を実現していきます」

フェラーリ・ジャパンが国内初公開した新型PHV「296GTS」=6月24日、三重県の鈴鹿サーキット

 ―2030年までに事業に伴う温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現することを掲げている

 「フェラーリは、2030年にカーボンニュートラルを達成することを目指しています。生産車の電動化やリサイクル部品の活用を通して二酸化炭素(CO2)排出削減を促進する計画があり、植林を通してイタリア国内に「フェラーリの森」を造る計画もあります。20年以内に合成液体燃料(e―fuel)にも注目していく予定です。合成液体燃料も循環型経済の一環になると思っているからです」―ロシアによるウクライナ侵攻に関して「ウクライナでの戦争のせいで多くの人が苦しんでいて、深刻な人道的問題が起きていることは確かです。このため、フェラーリは今年の3月に経済的に困難な状況にあるウクライナ市民に対して、人道援助のため100万ユーロ(約1億4000万円)を寄付しました。その地域ではサプライヤーがいないのと、顧客は非常に少ないので事業の供給面における影響はなく、市場の面でこの戦争はフェラーリに特別な影響はもたらしませんでした」―しかし世界中で経済的な影響が出ている「世界に広まった連鎖的影響を考慮すれば、我々も経済的に無関係でなかったのは事実です。けれども、今日のウクライナを見るとき、それは経済的問題ではなく、人道的問題としてとらえることしか私にはできないのです」

フェラーリのハイブリッド車「ラ フェラーリ」(手前)=2015年10月、米ニューヨーク

 ―新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)がもたらした半導体不足による生産への影響は

 「フェラーリにとって半導体不足による影響は基本的にゼロでした。適切な生産スケジュールを可能にしたサプライチェーンがあったことやサプライヤーとの戦略的な関係を築くことに成功した二つの理由がその背景にあります」―自動車の三大レースの一つとされる耐久レース「ルマン24時間」にフェラーリが2023年から復帰することや、F1などレース部門について「モータースポーツは、三つの理由でわが社にとって非常に大切です。レース部門で開発された技術が一般車に反映されること。商業的かつ技術的な面で新しいパートナーシップ連携を可能にすること。そして、非常に重要なのはレース部門が人々に与える影響です。あらゆる細部に注意を払った精細な技術発展が求められるため、偏執的とも言えるほどの集中が常に必要なのです。モータースポーツを事業に取り込むことは、このようなソフト効果を企業全体にもたらします」

 ―日本の読者へのメッセージをお願いします

 

イタリア北部マラネッロのフェラーリ本社で共同通信のインタビューに答えたビニャCEO

「フォルツァ・フェラーリ!(頑張れフェラーリ!)日本語に訳してもらう必要はないですね」

 ベネデット・ビニャ氏略歴 1969年、イタリア南部ポテンツァ生まれ。ピサ大卒。1995年にスイスの半導体大手STマイクロエレクトロニクスに入社。2021年9月からフェラーリCEO。

© 一般社団法人共同通信社