【発熱外来受診に代えた抗原検査キット無料配布】 東京都は薬局対象外、大阪府は薬局対象に

【2022.08.02配信】国が進める「発熱外来の受診に代えた抗原検査キットの無料配布」。外来医療のひっ迫を踏まえ、発熱外来において、受診に代えて抗原定性検査キットを重症化リスクの低い有症状者に配布し、医療機関の受診を待つことなく健康フォローアップセンター等での健康観察を受けることができる体制の整備を自治体に要請している。この配布先に薬局を選択肢に入れてよいとされているが、実際に薬局を配布先とするかどうかは、あくまで地域事情に応じた都道府県の判断にゆだねられている。このほど、本メディアの取材により、東京都は薬局を対象外とし、大阪府は薬局を対象とすることが分かった。

これまで薬局からの抗原検査キットの供給に関しては、通常の医療用抗原検査キットの販売(有料)に加えて、都道府県などが実施している無料化検査事業における協力などがある。

両方とも基本的には無症状の人を対象としており、これまでのスキームでは陽性が判明した場合は、受診を勧奨することになっている(無料化検査事業は都道府県により対象の要件が異なる)。

今回は、前述のこれまでの取り組みに加えて、発熱外来の受診に代えて、有症状の人に対して抗原検査キットを無料配布するスキームを加えるもの。発熱外来のひっ迫を踏まえた措置だ。

この配布先として、検査・診療医療機関に限らず、地域外来検査センターに加えて、公共施設や薬局も考えられることを明確にしているもの。
配布先を医療機関や検査機関に限定するのか、それとも薬局も含めるのかは、あくまで都道府県の判断に委ねられる。

こうした中、東京都は薬局を対象外とする見込みだ。8月1日午前、本メディアの電話取材に対し、東京都は「薬局を配布先とすることは見送る方針」と回答した。
一方で、大阪府は「薬局を対象として含めることで早急に対応中」と回答。加えて、大阪府の薬局関係者に電話取材したところ、大阪府では大筋で薬局を対象とする方針で調整済みという。

従来の「販売」でも混乱/取り扱いリスト薬局でも対応困難事例も/「7月は6 月比で6倍の需要」

通常の「抗原検査キットの販売」に関して、厚労省は「取り扱い薬局リスト」を公開。大手調剤チェーン企業や調剤併設ドラッグストア企業などがいち早くリスト掲載に至っている。
加えて、医療用抗原定性検査キットを取り扱う薬局の一覧を掲載している薬剤師会として、 福島薬剤師会、広島県薬剤師会、香川県薬剤師会が掲載に至っている。

ただ、リストに掲載した大手企業によると、リスト公開もあいまって、抗原検査キットへの問い合わせが急増。日によって在庫切れの店舗も増えているという。
ある大手企業は、医療用の抗原検査キットの7月の販売個数(無料化検査事業と販売分含む)は、6月月間販売個数の約 6 倍となっているとした。

報道と実施のタイミングのズレ/薬局に“無料の抗原検査キットください”の 問い合わせ

「報道」と「実施」のタイミングのズレの問題を指摘する声もある。

“薬局での無料配布”の可能性を、政府は7月 25 日には決定し、発表にしたがい、26 日にはその内容が報道された。

しかし、この時点で薬局での無料配布が始まっていたわけでもなければ、都道府県ごとの対応方針も全く未定であった。
こうした中で、薬局では「無料の抗原検査キットをください」といった市民からの問い合わせが急増し、対応に苦慮する薬局が少なくなかった。

さらに、需要急増によって在庫が逼迫し、欠品する薬局も出ていた。在庫があっても値段を提示すると「無料だと報道されていた」と来局者から怪訝な顔をされるケースも発生している。

一概には言えないが、「実施」の状況が整ってから報道発表するような対応も、今後、検討する余地があるのではないだろうか。

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