BMWがチームWRTとの契約を発表。LMDh車両で2024年WECハイパーカークラスに参戦へ

 BMWは8月2日、2024年のWEC世界耐久選手権ハイパーカークラスにおいて、チームWRTがBMWのファクトリーLMDhプログラムを運営すると発表した。

 この日の朝、チームWRTは13年にわたり手を組んできたアウディとの提携終了を発表していた。WRTは新たにBMWと契約を結び、現在開発中の『BMW MハイブリッドV8』をWECに投入、シリーズ制覇とル・マン24時間レースでの総合優勝を目指すことになる。

 なお、WRTがLMDh契約に付随して、GTのレースプログラムもBMW M4 GT3へと移行させるかどうかは未定となっている。

 WRTは当初、アウディとのLMDhプロジェクトを模索していたが、そのプログラムが3月に一時中断された後は、他のブランドとの参戦機会を求めていた。その時点では、BMWは2023年に開始されるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のプログラムのみを確定させている段階だった。

 だが、BMWはWECへの関心は持ち続けており、7月下旬になってバラーノでの最初のシェイクダウン画像を公開するとともに、2024年からのWECヘの参入を発表するに至った。

 BMW Mハイブリッド V8は2023年、IMSAのGTPクラスでチームRLLによる2台体制の参戦を予定しており、WRTはこの車両の2年目にプロジェクトに加わる形となる。

 WRTのヴァンサン・ボッセ、パスカル・ウィーツ、BMW Mモータースポーツ・ディレクターのアンドレアス・ルースとともに、この契約にサインしたBMW MのCEOであるフランシスカス・ファン・ミールは、「我々のLMDhプロジェクトが、ここ数週間で成長を遂げているのを見るのは、とても素晴らしい」とコメントしている。

「まずBMW MハイブリッドV8のロールアウトが成功し、次に取締役会によるWECへの復帰承認があった。そして今日、耐久レース界でもっとも優秀で成功したチームのひとつと、契約に至ったのだ」

「チームWRTのようなトップクオリティのチームがBMW MハイブリッドV8を導入し、ル・マンやその他のWECレースで戦うことに同意してくれたことを誇りに思うとともに、嬉しく思う」

「今後数年間は、IMSAシリーズではBMW MチームRLL、WECではチームWRTが、両シリーズのトップカテゴリーにおいて素晴らしいポジションを得るだろう」

フランシスカス・ファン・ミール、アンドレアス・ルース、ヴァンサン・ボッセ、パスカル・ウィーツ

 WRTは2020年のDTMドイツ・ツーリングカー選手権のプログラム終了後、スポーツカーレースにおけるトップレベルでの参戦可能性に備え、LMP2クラスへと参入。その初年度から成功を収め、異なるクルーで2021年のWECとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのタイトルを獲得し、ル・マン24時間レースでもクラス優勝を成し遂げていた。

 今季はELMSにこそ参戦していないものの、WECには2台のオレカ07・ギブソンで参戦し、6月の第3戦ル・マン24時間では3台目の追加エントリーも行っている。

「チームWRTは、BMW Mモータースポーツとの新しいパートナーシップの開始を非常に喜んでおり、モーターレースにおいて素晴らしい血統を持つブランドと提携することを光栄に思っている」と、ボッセは述べている。

「チームWRTは13年前に発足し、主にGT3や耐久レースなど、さまざまなカテゴリーで継続的に成功を収めてきた。そして、これから始まるFIA WECのハイパーカー新時代に参加することは、私たちの強い希望だった」

「その準備のために、2年前にLMP2プログラムを立ち上げ、ELMSとWECのタイトルを獲得し、初参加のル・マン24時間レースではクラス優勝も果たし、その競争力と成功を証明してきた」

「BMW Mモータースポーツのような強力なパートナーとともにLMDhカテゴリーに参入することは論理的な次のステップであり、我々はこれからの挑戦を楽しみにするとともに、BMW Mモータースポーツの私たちへの信頼に感謝している」

「BMW Mモータースポーツが1999年のル・マンで優勝したとき、私はチームのドライバーのひとりとして隣のピットボックスにいたことをいまでも覚えている。このような瞬間を再現し、ともに生きていけるよう努力していく」

バラーノでシェイクダウンされたBMW MハイブリッドV8

■2023年のM4 GT3プログラムは「全チームと緊密に連携し決定」

 アウディ時代には、GT3車両で数々の成功を収めてきたWRTだけに、LMDhとともにBMWのGTプログラムを実行するかどうかにも注目が集まるところだ。

 しかし、アウディスポーツに勤めた後、2022年の初頭にマイク・クラックの後任としてBMW Mモータースポーツに加わったルースは、WRTがカスタマーとしてM4 GT3を走らせる可能性についてはまだ決定していないと強調している。

 BMWのGT3車両であるM4 GT3は今年、世界デビューを果たした。現在、DTMではワーケンホルスト・モータースポーツとシューベルト・モータースポーツが、ファナテックGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ/エンデュランス・カップではローヴェ・レーシングなどが、M4 GT3を走らせている。

 また、BMWがGTPクラスへの参戦と並行し、来季もIMSAのGTDプロクラスでM4 GT3を走らせるかどうかについては、決定されていない。

「その成功と豊富な経験により、チームWRTはル・マン復帰のための理想的なパートナーである」とルース。

「ヴァンサン・ボッセと彼のパートナーたちとの話し合いは、最初から非常にポジティブなものだった」

「WECプロジェクトとBMW Mハイブリッド V8に対する情熱を共有していることはすぐに明らかになり、協力体制について合意に達するには時間がかからなかった。2024年の初参戦に向け、来年は集中的な準備期間が設けられる予定だ」

「チームWRTのGTレース参戦の可能性については、まだ我々は熟考していない」

「2023年シーズンのBMW M4 GT3のレースプログラムについては、今後数カ月をかけて、BMW Mモータースポーツの全チームと緊密に連携し、決定していく」

98号車BMW M4 GT3(ローヴェ・レーシング) 2022スパ24時間

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