二酸化炭素が原料に! 既存のインフラがそのまま使える未来のエネルギー「合成燃料」とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、未来のエネルギーとして期待される“合成燃料”について、キャスターの田中陽南が取材しました。

◆水素と二酸化炭素を原料とした未来のエネルギー

現在、日本は2030年までに2013年度比46%の温室効果ガス削減を目標に掲げていますが、今回、田中が向かったのは、国内の燃油販売シェア1位を誇るENEOS株式会社の中央技術研究所。

研究員の岸田さんに、開発中の環境に優しい新しい燃料について聞いてみると、手渡された容器の中には、透明でサラサラとした、見た目は水のような液体が。

それは何かといえばガソリンに代わる燃料、「合成燃料」。これは地球温暖化の原因となる"二酸化炭素”と"水素”が原料で、カーボンニュートラルに貢献できると注目を集めています。

どうやって作られているのかを知るべく、製造技術開発を行う実験棟に赴くと、そこには機械とメーターがびっしり。

ここでは水素と変換した二酸化炭素を合成し、燃料の元となる人工的な原油を製造。そして、その人工的な原油からガソリンや重油など、それぞれの燃料にしていくそうです。こうした合成燃料は現在、世界各国で化石燃料に代わる燃料として研究が進められています。

そんな合成燃料の特徴は「資源量」で、水素と二酸化炭素からできているため、自然の力を使ってそれらを回収することで、資源に困ることはありません。しかも、燃料として燃焼すると二酸化炭素が出るものの、その二酸化炭素が再利用できるため、環境負荷も軽減。

また、原料となる二酸化炭素は、工場の排気ガスなどから利用することもできます。さらに、合成燃料は液体で性状が全く同じため、既存のタンクローリーやガソリンスタンド、そして自動車まで全てガソリンと同じように使用可能で、新たなインフラ整備が不要という大きなメリットが。

◆堀潤も期待! 早ければ2040年には実用化も!?

所長の早坂さんによると、この合成燃料を作ることになったきっかけは、航空機や自動車、船舶の分野において、カーボンニュートラル燃料に対するニーズの高まりを考えてのこと。現在は、ラボスケールからもう少し大きなスケールにスケールアップするような段階で「ビーカースケールの技術をさらに大きなスケールでの技術検証を行い、商業化に備えていきたい」と抱負を語る早坂さん。

ただ、課題もあり、その最たるものが「コスト」。現在の試算では合成燃料1リットルあたりの製造コストは700円。国内で水素を取り出すためにはまだまだ大きなコストがかかるそうで、現状ではガソリンの数倍。しかし、早坂さんは「課題はあるものの実用化はそう遠くない」と語ります。「カーボンニュートラルに対する社会ニーズは非常に高まってきているので、技術開発もかなりスピードアップして取り組んでいるところ。技術開発陣としては、2040年までの実用化を目指しています」と明言していました。

新たなエネルギーの現状を学んだキャスターの堀潤は「ENEOSさんを全力で応援したくなりますね」と拍手を贈り、「今の石炭火力の発電所も二酸化炭素が出るが、今後はそれも合成燃料に還元できたり、いろいろな転用の可能性があり、夢が広がる」と期待を寄せます。

食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さんも「ワクワクしました!」と目を輝かせる一方で、インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは「長期的な目線で見れば選択肢があることはいいことかなと思いつつ、そもそも水素を作る段階でどのように作るのか」と疑問視し、完全に環境に負荷をかけないのか案じます。

さらには、「やはり2030年までに(温室効果ガスを)半減しないといけないという緊急性のある気候変動問題に対し、政府がこうした開発にお金を使うことも大事だが、数年で減らさないといけない二酸化炭素の話とは、分けて考えなければいけないと思った」と目の前にある問題を提起。

なお、合成燃料実現化までのロードマップとしては、グリーン成長戦略を見ると、政府は2030年までに製造技術や設備設計の開発をし、2040年までに導入拡大、コスト低減。そして、2050年の自立商用を目指しています。一方、ENEOSでは合成燃料に関して2025年までに小型の試験装置で技術開発。さらには前述の通り、2030年以降に実用化すべく進めているということです。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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