35歳と47歳の夫婦「子ども3人小学校からオール私立で住宅を購入したら老後資金は大丈夫?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、35歳と47歳の公務員の夫婦。現在子どもは2人ですがあと1人子希望しています。3人を小学校から私立に行かせ、マイホームを購入したいといいますが、このままで老後資金は大丈夫でしょうか? FPの鈴木さや子氏がお答えします。


3人目の子どもを希望しており、全員小学校は私立に入れたいです。

その後の進路は本人の希望を尊重したいのでオール私立になる可能性もありますが、教育費が一番かかる場合で今の状況でやって行けるか心配です。特に夫とは年の差があるため、現役時代に子育てが終わらないことも心配。教育資金のため学資300万円×2、終身保険解約予定時約500万円×2、ジュニアNISAも貯蓄分から二人分満額行う予定であり、毎月ほかの貯蓄は出来ていません。

現在夫が入っている月10万の保険は解約すれば約1,000万程になりますが、夫の病気が最近発覚したため、年末の手術が無事終わるまでは解約しない方向。夫婦ともに毎月iDeCo1万2,000円を2年前から、NISAは5年分の120万枠を現在の貯蓄分から満額投資予定です。また、今後現在の貯蓄分から投資に回していく考えです。

老後についても今の備で十分かどうか知りたいです。住居はずっと賃貸予定ですが、相談結果で購入できる可能性があれば検討したいです。

【相談者プロフィール】

・女性、35歳、公務員

・夫、47歳、公務員(今後2〜3年で部署異動可能性があり、そうなると手取りプラス10万円となる)

・子ども2人:3歳、6歳

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:49万円(夫30万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:約200万円

・毎月の世帯の支出の目安:49万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万8,000円

・食費:8万円

・水道光熱費:2万1,000円

・教育費:8万3,000円

・保険料:20万円

・通信費:4,000円

・お小遣い:設定なし

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:記載なし

・ボーナスからの年間貯蓄額:記載なし

・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,000万円

・現在の投資総額:1,000万円

・現在の負債総額:記載なし

・老後資金は公的年金毎月夫10万円、妻8万円予想。他妻個人年金で60歳から年84万円給付される予定。他夫婦のiDeCo分あり。

・退職金は夫婦共に1600万円程の予想

鈴木:3人目のお子様を希望され、お子様たちの進路は「小学校から私立」プランを考えている共働きママからの家計相談です。小学校から大学までオール私立の場合、7歳から22歳までの16年間合計で1人あたり約2,300万円、小学校受験の費用等合わせると2,500万円以上かかることに。3人の教育費とご夫婦の老後資金が不足しないか、みていきましょう。

教育費で赤字続きだが、子ども3人私立プランは可能

ご相談の内容からわからない点については仮設定をし、下記条件にて今後26年間の資産シミュレーションをしてみました。

【シミュレーション条件】
◆3人目が2年目に誕生。2年目・3年目の収入を妻半額に(実際の収入はもっと多いため、出産費用に充当と考え、出産費用は支出に加味せず)
◆部署異動の可能性については考慮せず。収入は夫婦とも年0.5%アップ。61歳~65歳は3割減
◆「その他支出(家具家電・娯楽費・旅行代・冠婚葬祭等)」として年100万円を加算
→教育費データが平均値のため、上回った場合にも充当できる
◆小学校入学前の教育費は1人あたり年60万円(保育代含む)
◆夫保険は4年目に払い済みとし、保険料は5年目より-120万円。夫60歳時に解約返戻金として収入に1、000万円加算
◆保険料は60歳以降かからないと仮定
◆投資資産について年利回り0%として試算
◆住居費は変わらない。更新料がかからないと想定
◆生活費は年1%増。子ども1人独立するごとに1割減
◆夫の公的年金は手取り14.8万円/月と仮定(ご相談文の年金額は厚生年金のみと推察しました)

異なる点も多いかと思いますが、ご参考までにシミュレーション結果をご覧ください。

資産状況の変動に臨機応変な対応が必要

3人目出産後2年間は妻の年収が減ることや、2年目から1人目のお子様が、5年目から2人目のお子様が、9年目から3人目のお子様が私立小学校に入り、教育費としてそれぞれ年150~190万円がかかるため、1人目の学資保険満期金を受け取る13年目(1人目18歳)までは赤字が続きます。この間、現在の資産である3,000万円から取り崩して過ごしていくことに。夫が60歳になると、退職金や、保険の解約返戻金が入り資産は大きくなりますが、その後も3人目大学入学まで赤字が続きます。3人目が大学入学する頃には上の2人は独立しており、生活費が減少、そして、夫は年金収入のみですが妻がまだ現役で働いていることで、その後は黒字転換し少しずつ資産は増えています。

グラフにはありませんが、ご相談者様が65歳まで、収入を半減として働き続けたとすると、夫77歳、妻65歳時点での資産は約6,600万円。医療費や介護費等で3,000万円使ったとしても、30年間、月10万円を生活費として取り崩せますので、老後資金についても問題ないでしょう。

シミュレーション上では、今後の収入や生活レベルが大きく変わらなければ、ご相談者様のご希望のプランは叶えられるように思います。しかし、実際にはもっと支出が増えたり、収入が減ったりすることもあるでしょう。資産状況に臨機応変に対応できるよう、できるだけ資産を守るためのポイントをお伝えします。

夫の保険は治療終了後「払い済み」に

現在、保険料が月10万円と、世帯の手取り月収の2割をも占めている夫の保険については、ご相談者様も書いているように、見直し必須です。おそらく医療保障特約がついている終身保険と推察しますが、治療が終わったあと、解約ではなく「払い済み」として契約を続けるのがおすすめ。払い済みとは、死亡保険金を減額する代わりに、以降の保険料の支払いをストップすることができるもので、死亡保障は残りますが、特約は消滅することに注意が必要です。本試算では、3年間は継続し4年目に払い済みにしたと仮定しました。その時点で解約するよりも、お子様が大学に行く頃などまで置いておき解約した方が、多少増やせますし、早く受け取らないため、使わないで済みますね。

教育費が読めないため投資はほどほどに

私立小学校に進学を考えていることから、ご夫妻ともに教育熱心で、お子様にしっかりお金をかけたいと考えているのではないかと思います。教育費は聖域と言われるように、かけようと思えばいくらでもかけられる費用です。特に小学校受験にかかる費用や、私立進学後の学費や習い事などは、一般的な公立小学校に行く場合と比べると、ピンキリで読めないもの。試算通りにはいかない可能性も高いでしょう。

家計の中で教育費の優先順位が高いのであれば、できるだけ預貯金の割合を多くしておくようにしたいもの。現在すでに全体の3割が投資資産ですので、これ以上増やさなくて良いのではないでしょうか。預貯金2,000万円から、NISAへ600万円(120万円×5年)、ジュニアNISA2人分として320万円(80万円×2人×2年)充当すると、預貯金は約1,000万円になり、今後の赤字続きに耐えられません。

教育プランを優先したいならマイホーム取得は後回しに

可能であればマイホーム取得も検討したいとのことですが、もしお子様3名の教育プランを優先したい場合は、前述のとおり資産を減らすことはおすすめできません。また、今の収入状況では、これ以上支出が増えると教育プランの実行は厳しくなってくると思います。現在の住居費と同じ負担で住宅ローンを組むと、どのくらい借りられるか見てみましょう。

現在の住居費は毎月10万8,000円ですが、マイホーム取得後は固定資産税や管理費等かかるため、毎月のローン返済額を8万円とすると、30年返済/固定金利1.3%/元利均等返済として、借入できる金額は2,383万円。変動金利0.4%とすると多少増え2,713万円借りられます。東京都の中古マンション価格は昨今上昇しており、4,000万円近くで、23区内だともっと高くなります。頭金や諸費用として最低でも2,000万円は入れないと、返済額が増えてしまいます。

私立小学校進学をこれから3名させることを踏まえると、今ここで貯金が2,000万円減ることも、今後の毎月の住居費が増えることも避けたいため、現時点でマイホーム取得を実行するのは賢明ではないと考えます。せめて、3人目のご出産後、教育プラン含め今後のライフプランがある程度見えてから検討するのが良いでしょう。

これまで3,000万円も貯めてこられた家計のやりくり力があるご相談者様ですので、今後の収入や生活費等が大きく変わることがなければ、お子様3名の教育プランの実行は可能でしょう。ただし、私立小学校でかかる費用は、データにはないものもとても多いもの。副業などが可能であれば、少しでも収入を増やすことができるとより安心です。

シミュレーションはあくまでシミュレーションですので、実際のお金の使い方や価値観などとすり合わせながら、今後のプランを考えるご参考になさってくださいね。

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