田村正和に釘付け!80年代傑作ドラマ「夏に恋する女たち」主題歌は大貫妙子  アーバンな大人たちのひと夏を描いた伝説的TBS金曜ドラマ

田村正和、原田芳雄、名取裕子らが出演「夏に恋する女たち」

 真夏の夜の夢ごとに
 誰も酔いしれ 恋する

1983年2月〜の『金曜日の妻たちへ』、5月〜の『ふぞろいの林檎たち』と、今となっては伝説的TBS10時の金曜ドラマ枠で、続いて8月から始まったのが『夏に恋する女たち』である。“たち” シリーズの新作は中年シングル編かよ… と、特に興味もなかったJKの私。夏休みも折り返し地点、冷房の効かない蒸し暑いキッチンで、麦茶を片手になんとなく毎週見ていた。

時はバブル前夜。六本木のマンションを舞台に、7階に住む訳ありシングル6人のひと夏の交流が、アーバンに描かれる。出演は、気鋭のカメラマン・田村正和、トウの立ったホスト・原田芳雄、駆け出しのイラストレーター・名取裕子他、津川雅彦に萬田久子に梓みちよ、そしてクレジットに「若い女」としか表示されない美保純。ナウな都市部のドライな空気感、横文字職業のカッコよさなど、西武系が君臨した80年代文化の香りもぷんぷん漂っていた。

内面はちょっとヘビー、だけど遊び心あふれるオープニング

冒頭は、主要キャストによるタイトルコール。皆で「夏に恋する女たち」と叫ぶのだが、そこが特にいい。田村はモノマネのように田村節だし、原田はわざと間違えて「男たち… 女たち!」と言い直すし、遊び心満々で、もうそれだけで6人の関係性が見えてワクワクした。そして主題歌のピアノが流れ、透明感のある甘やかで伸びやかな大貫妙子のボーカルに世界が覆われていく。水彩画風の横尾忠則によるオープニング画像もこれまた本当に素敵である。

だが、登場人物の内面はちょっとヘビーだ。レイプや離婚、親との確執、アル中など、過去を抱えて病んだ都会人の姿を描き出しており、そこを80年代らしい軽さで切り取っていく力技の演出が印象的。ただ、当時は津川雅彦や原田芳雄といった出演男性陣のほとばしるフェロモンや中年の魅力がまだイマイチ分からずいろいろと理解に苦しんだ(だってJKだもん)。かと言って、女性陣に共感するでもなく、でもそれが都会の大人なんだろうと妙に納得していた。わかるようになったら私も大人かな、と。

最終回、6人はゆるく親しくなるのだが、今この年齢でドラマを見ると、ちょっとうらやましい。田村が原田に言う「一人では寂しいけれど、二人以上になると疲れてしまうから。」というセリフも切ない。付かず離れずの友情。それって最高だけど、なかなか手に入らないものだしね。

青年期から中年期への田村正和の色気! その魅力も堪能できるドラマ

「夏に恋する女たち」は、ちょうど田村正和の青年期〜中年期にかけての過渡期とも言える渋甘な等身大の魅力が最高に堪能できるドラマではないかと私は思っている。田村のドラマでの人気がスパークし始めるのは1980年代。それ以前は「こんばんは。田村正和です。」とモノマネされる二枚目のイメージしかなかった私に、「夏に恋する女たち」の彼はなんと艶っぽい印象を残したことだろう。青年期の終わり、1994年スタートの古畑任三郎役よりずっと以前の田村正和。初めて大人の男を意識した瞬間!

田村は1943年生まれだから「夏に〜」収録時は40歳手前くらいか。青さの残る甘いルックスと、中年へ向かい熟成されつつある渋みが同居しあってなんとも言えない色気を醸し出している。役どころはアートヌードばかり撮るシングルのカメラマン。いつもゆったりしたVネックセーターに白いパンツ姿でサングラスを決めている。プライドも自己評価も高く、根拠のない自信ばかりあり、女にはモテてキザ。目が離せなかった。

例えばこんなエピソードが出てくる。田村の部屋に入ってきた名取裕子にいきなりキスをする田村。カメラマンとイラストレーターの二人は広告コンペのライバルで、ケンカしながらもお互い気になる存在になっていた。

「あなたコンペに負けるわ。だっていきなりキスなんかしてくるのは勝てる自信がないからでしょ?」

… といきりたつ名取に向かって、田村はこう言い放ったね。

「今は何を言っても恋の告白に聞こえるぜ!」

きゃーー! 痺れる!

こんな台詞はあの当時の田村正和にしか言えない。そして気の強いはねっかえりを演じる名取裕子も、これまた絶妙に田村に溺れているのだった。私と同じように。

大貫妙子が歌う同名主題歌。中谷美紀、原田知世もカバー

坂本龍一アレンジによる大貫妙子の同名主題歌「夏に恋する女たち」は、ドラマ開始と同日にシングルが発売。1983年10月21日リリースの7thアルバム『SIGNIFIE』では1曲目を飾っている。ちなみにドラマで使われているバージョンとシングルバージョンは歌詞やアレンジがちょっぴり異なる。

名曲の誉れも高く、1999年の中谷美紀、2016年の原田知世によるカバーも秀逸だ。

本当にうっとりするようなナンバーである。

今もイントロを聴くだけで、原田芳雄のホストスーツ姿が熱風のように心を吹き抜けていく。

※2016年8月23日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 親王塚 リカ

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