今後大注目! 被災時に役立ち、環境にも優しい“食べられるロボット”を取材

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“食べられるロボット”の研究現場を、キャスターの田中陽南が取材しました。

◆食品工場での安全性が高まる、可食ロボット

今回、田中が向かったのは、東京・調布市にある「電気通信大学」。

新竹研究室の新竹助教を訪ねると、そこにあったのは食べられる材料でできたロボット、通称「可食ロボット」。

このロボットは稼働するアーム部分を食べることができ、その原料はゼラチン。水・グリセリンを加え液体状にし、アーム状の型に流し込んで成形することでパーツを製作しており、おせんべい程度のものを掴み、持ち上げることが可能です。

こうした可食ロボットは、日本のみならず各国で研究が進んでおり、その活用法は「実用化は食品工場で食べ物を扱うようなグリッパーなどが一番近い」と新竹助教。

例えば、食品製造の工程で食品をハンドリングするグリップ部分が取れてしまうなどし、"異物混入”が騒がれることがありますが、グリップが食べられる材料であれば、万が一のことがあっても食べる側にとって問題なく、その安全性は高まります。

◆被災者の栄養補給など災害現場で役立つ可食ロボット

続いて、田中は2016年から東北大学で可食ロボットの研究を続けている多田隈准教授にリモート取材。多田隈准教授は、「レスキューロボットなど、災害対応用に役に立つような使い道が設定できないかというところがモチベーション」と声を大にし、「(災害現場で)意識があってもなくても顔さえ露出していれば、そこにアプローチして栄養を届けられるようにしたい」と展望を語ります。

現在、多田隈准教授が考えているのは「体内で動く可食ロボット」。それは、喉元に入ってロボット自体が胃袋まで到達して溶けてしまうものと、パイプから栄養剤を流すときに食道を膨らませるのみの2パターンあるそう。

意識がない人間の口に物を入れる場合、意識が戻った際にふいに噛んでしまったり、飲み込んでしまったりするリスクがありますが、そうしたときにこの可食ロボットであればとても役に立つと言います。

多田隈准教授は、2016年の熊本地震や2018年の西日本集中豪雨の現場で活動する際、さまざまな課題を実感。そのひとつが、災害発生後は安否不明者の生存率は72時間を過ぎると著しく低下すると言われているなかで、それをいかに伸ばすかということ。救助する時に可食ロボットで生存者に水や栄養素を届けることができれば、その時間を伸ばすことができると考えています。

可食ロボットの実用化にあたっては、動かす際に空気圧をどう作り出すかが課題で、今は空気圧タンクから送る方法があるものの「最終的には完全に独立させたい」と多田隈准教授。さらには、「最終的には全部"Fully Edible=完全可食”、完全に全部食べられる素材で作ろうと考えている」とも。

今後は医療業界とも協力し、災害用可食ロボットの開発に取り組んでいく予定で、「10年、15年とかぐらいはひとつ目標に据えたいと考えている」と語っていました。

◆可食ロボットは生態系の維持、環境のためにも必要!

可食ロボットの開発に勤しむ2人を見て、キャスターの堀潤は「すごい!」と拍手を送り、「72時間と言われているものが、延びるかもしれないですね。難病の治療中で飲み込む力がないときにも、こういうロボットが直接体内に栄養を届けてくれたりすることもあるでしょうし」と話し、災害に限らずさまざまな活用法の可能性に興味を示します。

株式会社Unicode CEOの赤城命帥さんは「まだ開発段階だと思うが、せっかく食べるなら味があったほうが……」と可食ロボットの味に関心を寄せます。取材をした田中によると、現在はいろいろな食材を使って研究されており、味や匂いをつけることも可能だとか。

また、株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは「こうしたところに投資するベンチャーキャピタルや国に頑張ってもらってしっかり実用化してほしい。これはすごく可能性があると思うし、面白い」と期待を寄せます。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんも「こうしたものがもっと発展していった先に、他の分野での活用もあると思う」と今後の展開を楽しみにしている様子。

ちなみに、新竹助教がロボット開発を始めたきっかけは、海外での研究中、何もない駅で終電を逃してしまい、周りの機械が食べられたらと思い、閃いたそう。

また、今後の可食ロボットについては、ドローンそのものを可食ロボットにすることで、被災地などに食料を届けた際にドローン自体も食べることができるほか、魚型にすることで生態系の調査に活用した後に、環境に負荷をかけずに済むなど、さまざまな可能性があるそう。

能條さんは「新しい技術は、夢がある」と言い、「今は大学も稼がないといけない。研究に対する予算が減っているが、こうしたことを見ると、いろいろな可能性があるので、私たちも少しでも参加したいと思った」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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