アメリカの格付けランキングトップ3の銘柄は?日本はトヨタが一強

「格付け」と聞くと、バラエティ番組などをイメージされるかもしれませんが、もともとは金融用語であることをご存知でしょうか?

国や企業も格付けがされていて、そこには投資のヒントがあるのです。


格付けとは?

例えば、債券の代表的なリスクの一つに「信用リスク」というものが挙げられます。債券を発行していた国や企業がデフォルト(債務不履行)に陥ると、約束されていた利息や満期に受取るべきお金が受け取れなくなります。

また債券を発行する際にも格付けが発行のコストを決める指標の1つになりますので、資金調達のしやすさにも影響します。投資すべき債権なのか、また投資すべき株式なのか判断する際にも格付けは参考になると考えます。

格付け会社としては、米国のムーディーズ・インベスターズ・サービス社とS&P グローバル・レーティング社が2大格付け会社と言えるでしょう。

S&P グローバルは6月22日(水)に世界的な金利上昇によって、イタリアやブラジル、エジプト、ガーナ、ハンガリー、ウクライナなど信用格付けが圧力を受けそうな国が増えていると警告しました。直近では7月29日(金)に、ウクライナの格付けを「CCC+」から「CC」に引き下げたというニュースが報じられ、ウクライナは対外債務返済の繰り延べに同意を求めており、債務再編計画に向けて動く可能性が高いとされています。

格付けは大手企業の株価にも影響

株式の格付けについては、今月に入り、ムーディーズがスイスの金融大手クレディ・スイスの格付け見通しを引き下げしましたね。シニア無担保債格付けを従来の「Baa1」から「Baa2」へ、長期シニア無担保債務・預金格付けを「A1」から「A2」へと引き下げました。

S&P グローバルも5月に既にクレディ・スイスの長期発行体信用格付けを「BBB+」から「BBB」に引き下げていましたが、8月1日(月)に同行の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げています。

クレディ・スイスが7月27日(水)に発表した2022年4-6月期決算は純損失が15億9000万スイス・フランと予想を上回っており、トマス・ゴットシュタイン最高経営責任者(CEO)の後任に事業再構築の専門家のウルリッヒ・ケルナー氏を起用すると発表していましたが、フランチャイズの安定性に対するリスクの高まりや、経営陣の入れ替えへの先行き不透明感から「明確な戦略の欠如」ということでの引き下げとなったようです。

格付けの引き下げを受けて、クレディ・スイスの株価は6%下落しており、株価へのインパクトというのもあることを改めて感じています。

格付けは、「AAA」という評価が付いた債券や株式が最も安全性が高いといわれています。格付けが低い債券ほど信用リスクが高いといえ、「BBB」以上の格付けを「投資適格格付け」と言い、比較的信用がしっかりしていると考えて良いでしょう。

一方で、「BB」以下は「投機的格付け」と言われており、注意をした方が良い信用の水準だと言えます。「D」になるとデフォルト(債務不履行)し、元本を失う可能性が高いと判断されます。

世界で3社しかない最上位格付け企業

さて、ここで、世界で3社しかないS&P信用格付けにおいてAAA(トリプルA)の最上位格付け企業を紹介します。

まずジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)です。ジョンソン・エンド・ジョンソンは世界最大級のヘルスケアカンパニーで、医薬品の研究開発から製造、販売を中心に医療機器や日用品まで幅広い事業ポートフォリオを有しています。医薬品、医療機器・診断、消費者の3部門で構成されていて、それぞれが分かれていることで効率的な経営がされている企業です。

日本では「バンドエイド」、「ジョンソン」ベビー製品などの消費者向け製品や、使い捨てコンタクトレンズ「アキュビュー」などで有名ですね。世界トップクラスの研究開発投資でそれが新製品の開発や販売が多いことやM&Aや社内新規事業開発にも積極的で、成長性につながっています。

BtoCではなく、BtoBの医療機器や医療品の売上高がと多くを占めていることで事業に安定性があるほか、利益率が高めであることも強みです。50年以上連続増配の配当王でもあります。直近の配当利回りはおよそ2.5%となっています。

次はマイクロソフト(MSFT)です。1975年にビル・ゲイツ氏によって創業された企業で、ワードやエクセルなどのMicrosoft OfficeシリーズやWindows、Xboxなどで知名度が高い、私たちの仕事や生活で欠かすことのできない製品やサービスを提供する、ご存知ソフトウェアの巨大IT系企業です。

ソフトウェアの開発、製造、販売、ライセンスの供与やサポートなどのサービスを展開しており、ハイブリッド勤務など各企業や各産業のDX化でも恩恵を受ける企業といえます。1986年にNASDAQに上場していた老舗のハイテク企業で、足元ではクラウドサービスのAzureなど、クラウド事業への積極投資を継続しています。

最後はアップル(APPL)です。創始者であるスティーブ・ジョブズ氏が黄金時代を築き、現在のCEOはティム・クック氏です。スマートフォンのiPhone、タブレット型情報端末のiPad、パーソナルコンピュータのMacやMacBook Air、携帯音楽プレーヤーのiPod、ウェアラブルコンピュータのApple Watchなどの開発と販売をする会社です。

技術力だけではなく圧倒的なブランド力も強みでiPhoneのリピーターが多いほか、iTunesとソフトウェアの売上高やApple CareやApple Payのライセンス料金も伸長。またApple Storeはコンピュータストアの概念を変えたと言われており、サードパーティー製アクセサリーの売上にもつながっていて競争力の強さに繋がっています。

20年ほどで株価が100倍に成長しており、自社株買いにも積極的な企業です。ムーディーズ・インベスターズ・サービスは21年12月にアップルの長期格付けをAAAに引き上げました。

日本ではどうかと言いますと、日本の格付け投資情報センターによりますと、22年7月末時点でAAAの企業は2社。トヨタ自動車(7203)と豊田通商(8015)です。

格付けは、専門家の意見として参考になる部分もあるかと思いますが、格付けする企業によっても評価が異なることもありますので、その点も含めて過信はしないようにご注意いただければと思います。

8月1日週「相場の値動き」おさらい

週末8月5日(金)の日経平均株価は、前日比243円67銭高の2万8,175円87銭と3日続伸し、約2カ月ぶりに終値での2万8,000円台への回復となりました。7月29日(金)の日経平均は2万7,914円66銭でしたので、週間では261円21銭の上昇となりました。

7月月間でみると米主要3指数はそろって上昇。ダウ平均は約7%、S&P500は約9%上昇。そしてナスダックは12%上昇し、月足でようやく反発してきました。

7月のFOMCでは市場予想通り2会合連続となる0.75%の利上げとなりましたが、パウエルFRB議長発言では労働市場の力強さが景気を支えており、景気後退に陥っていないという認識が示されたほか、政策は会合ごとに設定され、9月以降の利上げペースが緩やかになるのではないかとの期待感から、米市場の流れが変わってきているようです。

8月5日(金)の雇用統計の結果を受けて、8月8日週がどのように相場が動いていくか、注目していきましょう。

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