<南風>新太平洋時代

 現今の日米中ロの動向は、ロシアのウクライナ侵略、中国の一帯一路戦略の強行、日米同盟の一層の軍事力強化拡大などにより世界に大きな変動を与えている。

 1970年9月、エドウィン・O・ライシャワー・ハーバード大学教授の「新太平洋時代」と題する講演がハワイ大学ケネディーシアターで行われた。大学院生だった私も参加した。

 ライシャワー教授は1910年、宣教師の子として東京に生まれ、16歳まで過ごした。ハーバード大学で中国と日本の歴史を学んだ。第2次世界大戦中は国務省などで対日関係の任務に従事。1950年からハーバード大学で教べんを執る。61年、ケネディー大統領の任命により駐日米大使を5年間務め、日米関係の改善に貢献した。教授として復帰すると日本および日米関係の著作を多数出版。アメリカの日本研究の第一人者とされた。

 講演で、教授は、20世紀後半および21世紀においては、これまでの大西洋中心の世界秩序から、太平洋を囲む主要国、すなわち、自由主義陣営の日米と共産主義陣営のソ連と中国の4カ国の相互作用によって全世界の安定・平和・発展またはその逆のことが大きく影響を受けるであろうと述べた。

 米ソは超大国として世界を二分していた。日本は69年に当時の西ドイツを抜いて、GNP世界第2位の経済大国となっていた。教授は日本の先進性と文化力を高く評価した。一方、中国はまだ貧困国であるが、その潜在能力は極めて高く、21世紀には新たなスーパーパワーとなるであろうと予測し、そして世界は新太平洋時代に入ると結論付けた。

 日米中ロの4カ国の軍事、経済、外交などの相互作用によって、世界情勢は正負どちらにも大きく動くと半世紀も前にライシャワー教授は洞察していたのだ。

(澤田清、澤田英語学院会長 国連英検特A級)

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