夏の甲子園開幕 海星 4強目標「熱くやる」

4強を目標に甲子園へ挑む海星。(左から)主砲の森、投手二枚看板の宮原、向井、3番・遊撃手の丸本=長崎市、県営ビッグNスタジアム

 第104回全国高校野球選手権は6日、兵庫県西宮市の甲子園球場で49校が参加して開幕する。長崎県代表の海星は3年ぶり19度目の出場で、第3日の1回戦第1試合(8日8時)で日本文理(新潟)との対戦が決定。「4強」を目標に掲げ、憧れの舞台に挑む。

◆「2度目」の夏
 チームは2度の大きな敗戦を糧に今回の出場権をつかんだ。一つ目は大崎に1-2で惜敗した昨夏の長崎大会準決勝。2年生で投打の主力を任されていた選手たちにとっては「あと一歩」ではなく「甲子園に連れていけなかった」という悔しさだけが残った。当時継投した宮原と向井は敗戦日の「7.25」をグラブに刺しゅう。先輩たちの思いも背負ってきた。
 もう一つは昨秋の九州大会準々決勝。新チーム最初の県大会を制して選抜出場を狙ったが、有田工(佐賀)に0-2で完封負けした。11奪三振で完投した宮原に9安打を放った打線が報いることができず、終盤に決勝点を献上。「何をやっても、この負けは取り返せない」。加藤監督がこう唇をかむほどだった。
 屈辱は厳しい冬を過ごす上で十分な原動力になった。今春の県大会はコロナ禍もあって8強に終わったが、その後は圧巻だった。5、6月のNHK杯は「前哨戦ではなく夏。負けたら引退」と位置付けて精神面で相当、追い込んだ。結果は地区予選から8試合計50得点7失点で優勝。攻撃がうまくいかない試合もロースコアで勝ちきった。
 迎えた「2度目の夏」の本番。例年以上にハイレベルだった中、重圧も力に変えて第1シードから頂点に立った。準決勝は“7月25日”に大崎から12安打を放って雪辱。決勝も県内屈指の守備を誇る創成館から13安打9得点で快勝した。全5試合でチーム打率は3割8分8厘、防御率は1.35。投打でバランスが取れた堂々の栄冠だった。

◆思い背負って
 例年、強打の印象が強いものの、その土台には堅守がある。特に今年はプロ注目の宮原、向井の投手二枚看板を中心に全試合2失点以内。加藤監督は「良くなかった。あれじゃ全国でやられる」と両右腕に満足していなかったが、本来の投手力は10点満点中9点と高く評価する。バックも内野安打性の失策を一つ記録した以外はほぼ完璧で、こちらも9点をつける。
 打線も強力だ。長崎大会のスタメン最高打率は主砲の森。決勝は2ランを放ち、丸本、西村を合わせたクリーンアップで計6打点を稼いだ。田川と牧も全試合で安打。けがで出遅れたリードオフマン河内、バントがうまい伊藤、代打で存在感を放った柿本らベンチ入り全員が、どこからでも得点できて切れ目がない。機動力を絡めていければさらに勝機は広がる。
 昨夏は長崎商が熊本工と専大松戸(千葉)の実力校を連破し、3回戦は延長逆転サヨナラ負けも神戸国際大付(兵庫)と互角に渡り合った。今春の選抜大会は準優勝した近江(滋賀)に長崎日大が善戦。そうしたライバルであり、同じ長崎県の仲間のためにも、簡単には負けられない。
 県勢の夏の全国4強は2007年の長崎日大を最後に遠ざかり、チームの過去最高成績も1976年の4強。目標を達成するだけの力は身につけてきた。あとは「熱くやる」のスローガン通り、大舞台での一投一打にどれだけ強い気持ちを上乗せしていけるか。県勢最多の甲子園出場を誇る伝統校が飛躍を誓う。


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