9月から東京で玉井力三(柿崎区出身洋画家)特別展 上越市の小学校所有 学年誌表紙原画など展示  春日新田小で「三笠艦橋の図」搬出作業

 柿崎区出身の洋画家、玉井力三(1908~1982年)を特集する特別展「学年誌100年と玉井力三―描かれた昭和の子ども―」が9月16日から11月15日まで、東京都千代田区の同区立日比谷図書文化館で開かれる。上越市の小学校が所有する絵画も展示予定で、このほど搬出作業が行われた。

春日新田小の多目的室で保管されていた「三笠艦橋の図」複製画を搬出(5月31日)

 玉井力三は当時の柿崎村に生まれ、昭和3年に太平洋画会研究所(後の太平洋美術学校)に入り絵画を学ぶ。戦後は洋画団体「示現会」の創立に携わった他、商業絵画の分野で活躍。特に『小学一年生』をはじめとする小学館の学年学習雑誌の表紙画を、25年間にわたって描き続けた。
 今回の特別展は学年誌創刊100年を記念して開かれる。力三が手掛けた表紙画の原画や、力三のさまざまな絵画を展示する。
 上越市の小学校からは昨年度末まで古城小で保管され、本年度から直江津小に移された学年誌の表紙原画2点と、春日新田小が所有する「三笠艦橋の図」が展示される。また、力三の二男の玉井龍さん(柿崎区)が所有する原画も多数展示される。
 「三笠艦橋の図」は日露戦争の日本海海戦で指揮を執る東郷平八郎を描いた絵で、原画は海軍省嘱託画家の東城鉦太郎が描いた。当時はさまざまな画家がこの絵の複製画を描いており、力三も昭和4年に春日新田小学務委員の藤井恕亮に依頼され複製画を描いた。複製画は藤井らによって東郷平八郎の自宅に持ち込まれ、直筆の揮毫(きごう)と書名が入った。東郷本人の揮毫が入った複製画は非常に貴重だという。
 戦争に関わる絵ということもあり、春日新田小では普段は児童の目に触れないようにカーテンが掛けられている。力三の画業において重要な意味を持つとして、特別展に特別協力している玉井力三応援団団長の山下裕二さん(明治学院大教授)の推薦で、出品が決まった。
 搬出作業は5月31日、仲立ちをした小林古径記念美術館の宮崎俊英館長の立ち会いで行われた。宮崎館長は「(玉井力三は)上越を代表する画家の一人。外部からの評価で、地元の画家の良さに気付くきっかけになってほしい」と語った。

特別展のチラシ

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