散髪苦手でも大丈夫! 発達障害児に寄り添う理美容室 長崎・雲仙「HANAHANA」

子どもの動きに合わせて細心の注意を払いながらカットを進める吉田さん(左)

 発達障害などが原因で、散髪に強い抵抗感を示す子どもがいる。「はさみの音を怖がったり触れられることを嫌がったり」「何をされるか予測できず怖い」など理由はさまざま。そんな子どもたちを受け入れる理美容店側には、障害への理解、心に寄り添う接遇、技術的な面を含めて一定の力量が必要だ。高齢者への訪問美容のほか、散髪が難しい子どもたちのカットにも積極的に対応している雲仙市小浜町の「HANAHANA」を取材した。

 佑磨ちゃん(6)と弟の達希ちゃん(3)は、父正人さん(45)、母美咲さん(43)=いずれも仮名=と来店。早速歩き回りはじめた佑磨ちゃんに美咲さんが声をかけ、同店主の吉田陽子さん(44)が待つカット台へ誘導した。
 美咲さんによると、佑磨ちゃんは自閉スペクトラム症で聴覚過敏がある。「はさみで髪を切る“じゃきじゃき”という音が特に苦手。それから、一つの所にじっとしていられない」という。えり足のカットが始まると吉田さんの手を払いのけ、また店内を歩き回る。
 吉田さんは、美咲さんがおもちゃを渡したり数を数えたりして佑磨ちゃんの気をそらした瞬間に、髪にはさみをさっと入れる。並行して、正人さんと遊ぶ達希ちゃんの髪もカット。さらに膝に座らせたり一緒に寝そべったりしながらはさみを動かし、約1時間後、兄弟ともすっきりした頭髪に仕上げた。
 「HANAHANA」は完全予約制で、人目を気にする必要はない。吉田さん自身、長女侑加(ゆうか)さん(21)が中途障害者。5歳の時、血液の難病を患い、治療薬が原因で起こる「シクロスポリン脳症後遺症」に。多動や自傷行為、他害など行動障害が始まり、知的発達の後退も。外出が難しくなり、落ち着きがない娘の行動に心ない言葉を浴びせられたこともある。
 「娘と同じような子はどこでどうやって髪を切っているんだろう」-。吉田さんのこの疑問が、現在「理美容サービスが行き届きにくい人へのサービス」に取り組む原点だ。高齢者中心の訪問美容をする予定だったが、「困っている親子にも来てほしい」と店舗を2018年9月に構えた。
 言葉を一時期発しなくなった侑加さんが、取り戻した最初の言葉が「はなはな」だった。調べてみると韓国語で「一歩一歩」という意味もあり、店名に決めた。開店から間もなく4年。「髪を切るのは楽しいということを子どもたちに伝えたい」と吉田さん。「店の雰囲気を知るためだけの来店もOKです」と話している。
 「HANAHANA」の電話番号は0957.60.4003。ホームページもある。


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