1990年代に緑茶のテレビCMで話題を呼ぶなど、「京女」を体現する俳優としても活躍した京都市在住の服飾評論家、市田ひろみ(いちだ・ひろみ)さんが1日午後5時50分、急性呼吸不全のため上京区の病院で死去した。90歳。大阪市出身。自宅は非公表。葬儀・告別式は近親者で4日に行った。喪主は弟・昌生(まさお)さん。
小学生時代は上海で過ごし、戦後京都に移り住んだ。堀川高、京都府立大女子短期大学部を経て、大阪の会社に3年間勤務。その後、大映の専属俳優となり、58年に映画「手錠」でデビューした。60年代から母親とともに美容室を京都で営み、着物の着付け教室や着物ショーの活動でも知られるようになった。
93年からサントリーの緑茶や番茶のCMに出演。京言葉を用いる和服姿の女性を演じて全国区の人気となった。テレビドラマ「京都迷宮案内」では橋爪功さん演じる主人公らの下宿先の女将役として親しまれた。
60年代から世界100カ国以上を旅して収集した400点超の民族衣装コレクションも有名。同コレクションは2020年に母校の府立大に寄贈した。
随筆家としても活躍し、著書に「市田ひろみがすすめる大人の京都 路歩き」「京の底力」など80冊。日本和装師会会長などの役職も務め、京都や日本文化を発信した。
90年京都府あけぼの賞、2001年に「現代の名工」(着物着付師)に選ばれた。16年に文化庁長官表彰を受けた。
05年~07年に京都新聞夕刊「現代のことば」も執筆した。