日経平均が2カ月ぶりに2万8000円を超えた要因、それでも持ち株が上がらないのはなぜか?

先週末、8月5日(金)の日経平均株価は、今年6月9日(木)以来となる、28,000円を超えて終了しました。今年に入り、米国の金利上昇や原油高などの影響で株価は軟調に推移していましたが、ここにきて、強い動きとなっています。但し、読者の方の中には、「自分の持ち株は上昇していない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

理由をいくつか説明します。


ある指数が今年最高を記録

一つは日経平均株価に比べて東証株価指数(TOPIX)が上昇していない点にあります。日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場(2022年4月1日までは第一部)に上場する約2,000銘柄の株式のうち取引が活発で流動性の高い225銘柄を、日本経済新聞社が選定し算出しています。

対して、TOPIXは東京証券取引所に上場する銘柄を対象として算出・公表されている株価指数です。2022年4月から新市場区分施行を契機に、TOPIXの構成も見直される予定ですが、段階的に移行する計画で、構成銘柄の選定方法については、今後策定される予定です。

日経平均株価の上昇率がTOPIXの上昇率よりも高いことを示す指標に「NT倍率」があります。

NT倍率とは、日経平均株価をTOPIX (東証株価指数)で割った数字です。両者の頭文字をとってNT倍率と呼び、両指数間の相対的な強さを示しています。

このNT倍率が8月5日金曜日に一時14.50倍まで上昇し、引け値ベースでは14.47倍で終了しました。これは今年最高の倍率になります。ここ最近で一番低い倍率は7月12日(火)の終値で13.98倍。この日の終値から日経平均株価は1,836円上昇(+6.9%)したのに対し、TOPIXは63Pの上昇(+3.3%)に留まっています。

NT倍率が上昇した理由

要因の一つに7月14日(木)のファーストリテイリング(9983)の決算発表が挙げられます。同社は、営業利益を2,700億円から2,900億円へ、純利益を1,900億円から2,500億円へ上方修正しました。同時に560円としていた配当予想を620円に引き上げる事を発表しました。

また、8月3日(水)には月次売上げ高を発表し、既存店とEコマースを合わせた売上高が、前年同月比6.4%増となった事を発表しました。同社株は、好決算や高水準の月次内容の発表をきっかけに株価を一気に上昇させ、期間中15,190円も上昇し、日経平均株価を533円も押し上げました。

半導体製造装置の東京エレクトロン(8035)も米国市場の半導体指数の上昇の影響などから、同期間中に7,150円上昇し、同じく日経平均株価を251円押し上げました。ファーストリテと東京エレクの2社で日経平均株価を784円押し上げ、この期間中の日経平均株価を1,836円上昇しました。その結果全体の約42%を占めた事になります。

対して、TOPIXのウエイト比率の高いトヨタ自動車(7203)は横ばい、三菱UFJ(8306)は25円安、NTT(9432)は132円安と7月12日(火)の株価を下回っています。こうした状況がNT倍率の上昇を招いていると言えます。

算出方法の違いが日経平均に与える影響

日経平均株価の採用銘柄は、昨年から算出方法に「株価換算係数」を導入しました。旧来の「みなし額面」では、平均株価を算出する際に株価水準を調整するために、すべての株式を50円の額面に換算して計算していました。一方、「株価換算係数」では、採用銘柄の株価が著しく高い場合に0.1から0.9の間で係数を設定し、株価水準の違いを調整します。

日経平均株価の225銘柄は定期的に入れ替えが行われますが、銘柄の構成比率(ウエート)が過度に高くならないようにするという決まりがあります。「みなし額面」では、1単元あたりの株価水準が高い「値がさ株」を組み入れるとウエートが大きくなるため、新たに採用しづらかったのです。

「株価換算係数」の導入により、任天堂(7974)や日本電産(6594)といった日本を代表する企業も名を連ねるようになりましたが、改定以前に採用されている銘柄群に対しては、これまでと同様の措置が講じられており、ファーストリテや東京エレク、2019年6月に株式分割したソフトバンクG(9984)などの「値がさ株」や「みなし額面」の大きな企業による株価の乱高下によって日経平均株価は左右されやすくなっています。

因みに、先週末の日経平均株価に対する構成比率は、ファーストリテが10.43%、東京エレクが6.09%、ソフトバンクGが4.23%と3社で20.75%を占めています。

日経平均株価が大幅に上昇しても、持ち株が全く反応していない時は、上記の銘柄などだけが上昇している、という背景がある事を覚えておくとよいと思います。

© 株式会社マネーフォワード