近江鉄道、10/16全線無料デイの「3つの狙い」とは?

近江鉄道は2022年10月16日、「ありがとうフェスタ2022」にあわせ同社の電車線全線をおとな・こども無料にします。また、当日は近江鉄道バス・湖国バス・八幡山ロープウェー・オーミマリンもこども無料で利用できます。

この無料デイは1日限りの取り組みとなりますが、その狙いは単に沿線のイベントを盛り上げるだけではありません。同社は8日、無料デイには「3つの狙い」があると発表しました。どのようなものか順に見て行きましょう。

地域鉄道の存続、乗車体験作り

鉄道の存続は今や全国的な課題です。近江鉄道は2016年、現状のままでは鉄道線の維持は困難として、滋賀県と沿線10市町に経営状況を説明して協議を申し入れ、現在は上下分離方式での存続に向けて検討が進んでいます。

そうした取り組みの中で、鉄道に乗車したことのない住民も増えていることを課題と捉え、乗車体験の機会を積極的に作る必要があるとしています。

コロナ禍で疲弊している沿線地域へ誘客、活性化図る

鉄道の利用促進には魅力ある居住地や観光地が必要ですが、沿線各地はコロナ禍により疲弊し、利用旅客も減少しています。近江鉄道は鉄道無料デイにより利用旅客を呼び戻し、活気ある街とすることを目指すといいます。

また、地域ごとに活性化イベントを実施してきた各団体に呼びかけ、鉄道を軸に一体となり、同日に広域でイベントを協働する大きな活動を形作ることも試行します。

鉄道活用の機運醸成

鉄道無料デイで利用者が増え、地域イベントが盛り上がること、そして渋滞が減ることで鉄道の存在感を地域に実感してもらう狙いも。鉄道無料デイで「鉄道を誘客に活用しよう」という雰囲気づくりを図ります。

各地で行われる「公共交通無料デイ」の取組

「公共交通無料デイ」を実施するのは近江鉄道が初めてではありません。最近の事例を見てみましょう。

事業者・路線単位では、2016年に島根県の一畑電車が新型車両7000系の導入を記念し一日無料を実施、2017年に東急電鉄が池上線で「開通90周年記念イベント 10月9日池上線フリー乗車デー」を実施しています。

2019年には熊本・桜町再開発事業の商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto(サクラマチ クマモト)」グランドオープンを記念し、熊本の10社局が参加する「熊本県内バス・電車無料の日」を実施。そのレポートは現在もWeb上で公開されており、増加した利用者数や経済波及効果などが確認できます。

コロナ禍で利用が低迷した地域への送客、という観点で見れば、岡山市や高知市で行われた運賃無料デイが参考になるでしょうか。岡山市では2021年末の11月と12月に1日ずつ、高知市では11月から翌年1月末までの計20日間で実施しました。無料化した交通機関の混雑や「誰が予算を出すか」といった課題はあるものの、乗車のきっかけ作りや沿線地域への送客といった点で好影響が確認されています。

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︎2022年8月10日8時30分追記……日付を一部修正いたしました(鉄道チャンネル編集部)

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