ライバルは特産 松阪牛 広島牛の新星「榊山牛」 目指せ 日本一! 

広島市内の肉料理の店で開かれた新しいブランド牛の試食会。

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試食した人
「舌触りがシルクのようというか」

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何かが違う、この新ブランド牛…。実は、最高級の松阪牛と同じ38か月の肥育期間で育てられた牛なんです。その名は「榊山牛(さかきやまぎゅう)」。広島・熊野町の農家が育てました。

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主催者
「うま味でやっぱり日本一を目指したい」

きょうの『深掘りNEWS DIG』は、「広島牛の新星『榊山牛』 目指せ 日本一! ライバルは特産 松阪牛」。

この牛がデビューしたころ、ご紹介しましたが、今や日本一を目指しています。最高級の松阪牛と同じ肥育期間で育てています。

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ふつう、広島牛は、生後28か月までの短い期間で出荷していて、十分太り、霜降りも入ります。一方、榊山牛などの長期肥育は、生後32か月以上で出荷します。これぐらい肥育すると、肉のうま味成分が増します。松阪牛や米沢牛などのブランド牛が長期肥育を導入していますが、エサ代がかかりますし、病気・けがのリスクもあります。

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広島県内の行政やJAは、採算面から短期肥育を奨励していますが、こうした中、榊山牛から長期肥育の中でもトップクラス「特産 松阪牛」と同じ38か月の牛が出たことで脚光を浴びそうです。広島のブランド牛「元就」の28か月をはるかに上回り、日本一を目指すという「榊山牛」を深掘りします。

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広島市に本店を置く焼肉店「ふるさと」です。

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ショーケースに飾られた榊山牛。2年前、この店と熊野町の農家などがグループを作って、肥育しています。

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ブランドの名前は、農家の地元の神社の名前からとりました。

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この広島牛の新星が、先日、食肉市場で驚きの評価を得ました。

広島牛の最高級の肉の質を競う県畜産共進会です。先月の大会では、三次市の牧場が出品した肉が最優秀賞を受賞。直後のセリではキロあたり3380円の最高値がつきました。

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ところが、そのあと行われた業者との1対1の取り引きで、これを上回るキロ3800円の値をつけた牛がいました。肥育期間38か月の榊山牛です。38か月は、松阪牛の中でも最高級の「特産 松阪牛」と同じです。

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肉を買い取った「ふるさと」の社長が、農家をねぎらいました。

焼肉ふるさと 海田安章代表
「すごいのを作りましたよ。これだったら、まず、全国の銘柄牛に負けんよ」

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農家(熊野町) 馬上幸治さん
「いや、これは達成感ありますよ」

共進会に肉を出品したほかの農家も興味津々です。

ほかの農家たち
「肉も全然、違う。これが、榊山牛。その値段で買ってくれる人がいれば、自分もやりたいが、リスクが多すぎる」

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「エサ代もかかりますしね」

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農家にとって長期肥育のハードルは高く、生産者は今のところ、馬上幸治さんだけです。

出荷直前の先月22日、熊野町の牛舎を訪ねました。これが、38か月の牛です。

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馬上畜産 馬上幸治代表
「姿形、まあ、ナンバーワンでしょう」

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馬上さんの飼育頭数は200頭。これまでは長期肥育の最低ラインである32か月で出荷していました。

馬上幸治代表
― なぜ38か月の肥育に挑戦?
「テストです。38か月まで飼ったら、どういう味になるかというテストです。どの子もいけるわけじゃないんです。ちゃんと選んで、この子ならいけると感じたものを選んで、きょうに至る」

馬上さんの信条は、牛の世話に手間ヒマを惜しまないことです。例えばエサはメーカーの配合飼料を使わず、トウモロコシや麦、大豆かすなどをその都度、かくはん機で混ぜたものを与えます。

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牛舎内は、においがしないよう徹底した掃除をします。32か月の長期肥育をしても牛が食欲をなくしたり、体調を崩したりしないようにするためです。

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その馬上さんにして38か月の肥育は未知への挑戦でした。

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馬上幸治代表
「松阪牛さんとか近江牛さんもそうですし、意識しましたけど、牛が『もうダメです』ってサインを出しゃ、ダメなので。そりゃ本当、こっちのエゴですから。でも『ダメです』ってサインを出さなかったので。期待通りに食べて、期待通りの体形になって…」

馬上さん自慢のこだわりのエサですが、ウクライナ戦争後は月々80万円ほど出費が増えているそうです。キロあたり3800円という価格には、高騰するエサ代をまかなう意味もあります。

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焼肉ふるさと 海田安章代表
「こうやって保証しとったら、要はエサとかもちゃんとふんだんに金をかけられるわけですよ。エサ、ケチったら絶対においしくならないから。肉は、エサで味を作るからね」

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こうして迎えた試食会…。会場の料理店は榊山牛の専門店です。

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店の代表・平野さんがサーロインを見て、まず確かめたのが脂でした。

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和牛lab K 平野勝士代表
「まとわりつかないというか、スーッと入って来る。めちゃくちゃ甘くて」

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平野さんによりますと、この肉の特徴は、▽脂の口溶けがよく、特に38か月はよく溶ける、▽あずき色に熟成した赤身の味が濃いことです。

平野勝士代表
「脂の甘味とお肉の味の濃さだけを全面に出せるように」

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平野さんは、サーロインの表面をじっくり焼き、中がレアの状態で提供しました。試食したのは、これまで榊山牛を扱ってきた関係者です。

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日本料理 馳走啐啄一十 木村理恵マネージャー
「溶ける、本当に。舌触りがシルクのようなっていうか」

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焼肉ふるさと 海田安章代表
「(生産者の馬上幸治代表と握手して)これだね。目指すところ。うま味でやっぱり日本一を目指したいですけどね。これだったら、いけますね」

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馬上畜産 馬上幸治代表
「機械作業みたいに行きませんから。また新しく1頭1頭向き合っていきます」

榊山牛を扱う料理店は、広島市内を中心に17店あります。

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今回の38か月の肉はあくまで試作品で、今後、生産量を増やし、一般の客に提供する計画です。

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こんな夢もありました。

海田安章代表
「海外にやっぱり輸出したいです。高く買ってもらえますからね。広島から世界のブランドになれば、農家の人も豊かになりますよ」

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肉のうまさで全国・世界を目指す榊山牛。38か月の牛の生産量を増やすため、グループでは馬上さんに続く農家の育成などに力を入れます。

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― スタジオに38か月育てた榊山牛で作ったローストビーフを用意しました。今回の38か月の肉は試作品で、今、2頭目を肥育中ですが、一気に増えるものではありません。こうした中で、榊山牛を育てたいと興味を持つ農家が複数いるということで、グループでは3年後に向けて生産態勢を拡充できればと考えているそうです。以上、『深掘りNEWS DIG』でした。

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