台湾を守らなければ、我が国は守れない!|和田政宗 8月4日、中国は日本の排他的経済水域内を狙って弾道ミサイルを撃った。史上初のことであり、極めて挑発的だ。ステージは変わった! 平和を叫べば平和は守られるという「平和ボケ」を捨て、あらゆる手段をもって国家国民を守らなくてはならない厳しい状況であることを認識すべきだ。

尖閣諸島でも日米軍事演習を行うべき

中国が8月4日、日本のEEZ(排他的経済水域)内を狙って弾道ミサイルを撃った。史上初のことであり、極めて挑発的だ。着弾した場所は、波照間島周辺のEEZ内をはじめ、我が国領土から最も近い着弾地点は与那国島から80kmである。

中国が撃った弾道ミサイル9発のうち7発は中国大陸から我が国の領土領海に向け撃っており、うち4発は台湾本島を超えて日本のEEZ内に着弾した。まさにこれだけでも「台湾有事は日本有事」ということが分かるがメディアの反応は鈍い。どれだけ危機的な状況か分かっているのだろうか。

そして、日本政府の対応も国民に危機をしっかりと伝えるものになっていない。着弾直後に政府は外務次官が駐日中国大使に抗議し、岸信夫防衛大臣が記者会見を行った。しかし、私がもし総理大臣であれば、速やかに国民に向け記者会見を行い、政府は何があっても国家国民を守ることを改めて表明するとともに、我が国を守るために対中国の演習を行うことを表明したであろう。

中国は我が国の出方を注視している。同規模の軍事演習を我が国は行って当然であり、その際に起きる「日本がエスカレートさせている」との論は、国際社会においては全く逆で、「日本は国を守るためにごく当たり前のことをしている」との話となる。むしろ、我が国が何もしないことによって、中国は「サラミスライス戦略」で、どんどん侵略ラインを押し込んでくるのである。

我が国は、弾道ミサイルを撃ち込まれた南西諸島海域=台湾東側海域のみならず、尖閣諸島においても演習を行うべきである。尖閣の久場島や大正島には米軍の射爆撃場エリアが設定されており、日本が許可をすれば、米軍単独のみならず日米共同の訓練をすることができる。

中国は、「尖閣は台湾の一部であるから中国の領土である」と荒唐無稽な主張をしており、だからこそ台湾有事は日本有事であるわけだが、今こそ尖閣の実効支配を高め、いかなる時も領土領海を守る断固とした行動を取るべきだ。

ペロシ下院議長はなぜ台湾を訪問したか

今年は日中国交正常化50年であるが、弾道ミサイルを我が国に向けて発射したばかりか、翌日の8月5日には東アジアサミットにおいて林芳正外務大臣の発言中に王毅中国外相が退室するという非礼があった。

日中国交正常化50年関連式典は政府関係では当然行う状況ではないし、日中外相会談も中国側に一方的にキャンセルされており、高レベル会談も全て中止すべきである。中国は歴史の節目など関係ないと高をくくっているのであるから、我が国も当然の対応をすべきだ。

今回、なぜペロシ米国下院議長が台湾を訪問したのか。それは台湾有事の危機が高まっていることに他ならない。下院議長一行が自身や議会の意志だけで来訪したのではない。そこには米国政府の意志がある。

なぜなら、ペロシ下院議長の台湾訪問時に、米海軍は原子力空母ロナルドレーガンを中心とする空母打撃群を台湾東側海域に派遣したし、沖縄県の米軍嘉手納基地には空中給油機を20機以上集結させた。

一昨年の10月には、クアッド(日米豪印)の外相会議が緊急で開かれ、トランプ大統領の再選がかかる大統領選挙直前にポンペイオ米国務長官が来日した。その際も中国による台湾侵略の動きを止めるための緊急的な会合であったが、今回も台湾侵略に対して米国としてくさびを打ち、阻止するためのものであったと私は考える。

中国による台湾侵略と日本侵略

今年5月、中国が侵略し支配を続けているウイグルの砂漠に自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)の模型が作られていることが判明したが、7月半ばに衛星画像により模型が破壊されていることが明らかになった。AWACSは浜松基地に配備されており、中国は、尖閣や与那国をはじめとする南西諸島のみならず、浜松基地など日本各地の自衛隊基地を攻撃することを想定し、演習をしているのである。

このような状況において、我が国は今、何をしなくてはならないのか。私は李登輝先生のある言葉が鮮明に思い浮かぶ。それは、「平和は何よりも社会の出発点である」との言葉であり、私の政治理念の礎となっているものだ。

李登輝先生は台湾総統として、中国に台湾海峡にミサイルを撃たれようとも断固たる意志で国防を強化し、台湾を守り続けた。我々は、平和を叫べば平和は守られるという「平和ボケ」を捨て、あらゆる手段をもって国家国民を守らなくてはならない厳しい状況であることを認識すべきである。

もうこの段階に至っては、中国による台湾侵略と日本侵略は同時に行われるわけであり、日本は米国とともに軍事的に台湾を守ることに舵を切るべきである。そうでなければ、我が国は守れない。米国は台湾を軍事的に直接守ることをバイデン大統領も表明した。我が国の覚悟を米側も問うている。

先週、台湾の対日友好議員連盟である亜東国会議員友好協会の会長一行と会談した。日本と台湾の政府関係者の公式往来を可能とする「台湾旅行法」の制定の要請があったが、私は日華平和条約終了50年にあたり、台湾との関係を強化するために軍事的連携を含めた日本版「台湾関係法」を作るなど日台連携の強固な法整備を行うべきだと述べた。

日本と台湾は運命共同体であり、これまでも日台関係法制定について様々な場所で私は提起してきたが、今こそ実現に踏み切るべきである。もうこれまでの国防に対する考え方では我が国の領土も国民も守れない。ステージは変わった。米国のみならず台湾とも国防で連携し、我が国も台湾も守るために行動すべきである。それが我が国とこの地域の平和を守る抑止力となる。

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和田政宗

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