テレビの賞金やYouTubeの収益、税金はいくら?タレントのお金事情をFPが解説

テレビ番組で高額賞金を獲得したら、YouTubeに投稿した動画から収入がはいってきたら、その税金はどうなるかご存知でしょうか?

タレント事務所・松竹芸能の公式YouTubeチャンネルとMONEY PLUSがコラボし、お金に関するさまざまな疑問を掘り下げていく動画企画がスタートしました。初回はフジテレビ『千鳥の鬼レンチャン』で賞金100万円を獲得したお笑い芸人の河邑ミク さんが、事務所の先輩で賞レースの受賞経験もある金子学 さんと一緒に、タレントと税金についてファイナンシャルプランナーの井内義典 氏に話を聞きました。

MONEY PLUSでは、動画だけでは伝えきれなかった詳細を、井内 氏に解説していただきます。


テレビ番組の賞金、税金の扱いとは

──タレントの方がテレビ番組の企画で受け取った賞金に税金はかかりますか?

井内:テレビ出演を本業とするタレントの方がテレビ出演によって賞金を受け取ると、「事業所得」の対象となり税金がかかります。

井内:事業所得は「総収入金額 - 必要経費 - 青色申告特別控除(青色申告の場合)」で計算します。最終的な税金の額は、確定申告を行い、事業所得と他の所得と合わせた上で決まることになります。

一方、タレントでない一般の方がテレビに出演して賞金を受け取る場合は「一時所得」の対象になります。年間50万円までは非課税ですが、50万円を超える場合、超えた分の2分の1について課税対象となります。ただし、経費などは抜くことができます。計算式は「総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)=一時所得
の金額」となります。

──YouTubeで活動するタレントの方も増えていますが、その収益はどうなりますか?

井内:広告費や投げ銭であるスパチャといった、YouTuberとして個人事業で得た収益は所得税の対象となり、事業所得になります。

井内:事業所得は「総収入金額-必要経費-青色申告特別控除(青色申告の場合)」で計算し、副業についての雑所得は「総収入金額-必要経費」で算出します。

一方、会社員などが副業としてYouTubeに動画をアップして得た収益は雑所得となり、給与所得など他の収入との合計額で税率が決まってきます。

なお、本国アメリカでは「著作権使用料(ロイヤリティー)」という扱いになり、アメリカの税金の24%の源泉徴収が行われるところ、日本とアメリカとの租税条約により、Googleにマイナンバーなどの届出を行えば、ロイヤルティーに対する源泉徴収税は免除されます。

タレントは個人事業主として法人化すべき?

──多くのタレントの方は個人事業主となりますが、会社員とどういった違いがあるのですか?

井内:タレントの方は、芸能事務所の従業員ではなく、芸能事務所と契約を結んだ個人事業主となっていることが多いようです。その場合、テレビ出演などタレント業で稼いだ収入については事業所得となり、所得税の確定申告が必要です。一方、多くの会社員の方は、企業があらかじめ税金を差し引いて給与として支払ってくれていますので、確定申告が不要のケースが多いです。

井内:なお、タレントの方が自ら法人を設立し、法人として芸能活動のギャラなど報酬を受け取る法人化という方法もあります。法人が報酬を受け取って売上を上げることになりますが、その利益については、所得税ではなく、法人税がかかることになります。そして、タレント個人は代表取締役などその法人の役員となり、法人が得た収入から役員報酬として受け取る形になるでしょう。法人の役員であるタレントが受け取った役員報酬は所得税の対象です。

──個人と法人化の違いを詳しく教えてください。

井内:まず、所得税も法人税も利益に対して課税されます。

井内:所得税は累進課税ですので、5~45%で税率が設定されています。売れっ子で収入が高く、利益が非常に高い人は税率も45%になるため、結果税金もかなりかかってしまうことになります。

一方、法人税は原則税率23.2%と一定です。法人の規模や売上による軽減税率はありますが、収入が多くなり利益がかなり高くなっても税率は上がらないため、稼いでいる人は法人のほうが有利でメリットがあるでしょう。逆に儲かっていない時は法人のほうが税率も高くなってしまいます。具体的には、個人事業の利益が700万円くらいある場合は、所得税率が23%となることから、法人化を検討してみるのも良いと言われます。

井内:ただし、法人となった場合、赤字でも法人住民税7万円が発生します。法人税は計算も難しく、その申告は個人の所得税の申告より複雑ですので税理士に依頼することも多く、その税理士への手続き代行の費用も掛かることになります。

また、法人の設立そのものにも費用がかかります。法人の設立には株式会社の場合、定款認証、登録免許税、会社の印鑑作成などで20万円以上かかるとお考え下さい。合同会社を設立する場合はもう少し安くできます。司法書士など専門家に手続きを代行する場合はさらにその手数料もかかります。また、法人の登記情報(法人の所在地など)に変更があると変更登記の費用がかかります。

税金だけじゃない、個人と法人の違い

──他にも知っておくべき違いはありますか?

井内:健康保険制度、厚生年金保険制度は会社員向けの制度で、会社から受け取る給与や賞与に応じて決められた保険料が給与、賞与から控除されます。

対して、国民健康保険は個人事業主や会社を退職した人、そしてその家族が入る医療保険制度で、前年の所得、世帯の加入者数などを元に保険料が決まります。年金については、個人事業主の場合、20歳以上60歳未満の人は毎月定額の国民年金保険料を納めます。ちなみに、今年度は月額16,590円です。

井内:なお、個人事業主が法人化して法人から役員報酬を受けることになると健康保険、厚生年金に加入することになりますので、こういった健康保険、厚生年金といった社会保険での保障が厚くなるのも、法人化のメリットです。

ただし、加入者分の保険料だけ負担する会社員と異なり、加入者と法人両方の保険料の負担を計算に入れる必要があるので注意してくださいね。


法人・個人どちらがよいのかは、利益がどれくらいあるかによって、大きく変わると言えそうです。これはタレント業に限った話ではないので、フリーランスや兼業・副業として個人事業を行なっている方も、自身の状況を確認し、場合によっては法人化を検討してみてもよいかもしれません。

松竹芸能チャンネル「芸人のお金事情って??河邑ミクは賞金100万円を何に使った??」

動画では、河邑さんと金子さんが賞金の使い道や給与事情についても明かしているので、ぜひ合わせてご視聴ください。

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