上場企業より多い!6000以上ある投資信託からどう選ぶべきか、3つのポイントをFPが解説

投資信託は、失敗しない資産形成のための3原則「長期・積立・分散」投資を実現する最も有効な金融商品のひとつです。しかし、実際何を選んだら良いのか迷ってしまう人も少なくありません。

今回は、投資信託を選ぶ際の3つのアプローチをご紹介します。


金融機関の「お勧め」を買わない

投資信託協会によると、2021年12月末の公募投資信託の本数は5,923本だそうです。これは上場している日本の株式会社数3,832社(日本取引所グループ2022年8月更新)をはるかに上回る数です。これだけ数が多いと「どれを選んで良いのかわからない」となってしまうのも十分理解できます。

しかし、投資信託を購入する際は、金融機関の窓口で絶対に「お勧めはなんですか?」と聞いてはいけません。なぜかと言うと、投資信託は金融機関それぞれが「売りやすいものを仕入れ、儲けやすいものを売り」、その手数料を儲けとする仕組みなので、どうしても「金融機関にとってのお勧め」を紹介されがちになるのです。

これは上場している会社の株の取引と比較するともっとわかりやすいかもしれません。前述した上場株式3,832社は、どこの証券会社を通しても売買が可能です。従って、証券会社にしてみれば、どこの株を投資家が買っても儲けは同じになります。

しかし、投資信託約6,000本をすべて扱っている金融機関はありません。有名ネット証券であっても、2,800本程度が限界ですし、銀行等になると100本以下というところもあります。つまり口座を開いた金融機関によって選択肢が違うということを知った上で取引を行わないと、思った様な運用ができなくなります。金融機関の窓口で親切にアドバイスをしてくれることはとても心強いことではありますが、儲けのロジックを知った上でつきあいましょう。

投資信託は、運用を投資のプロに託す分、投資家は手数料を負担しなければなりません。投資信託には、買う時に販売手数料が、保有している間ずっと信託報酬が、売却時には信託財産留保額がかかります。なお、商品によって手数料がかからないものや、率も異なります。

例えば、同じ投資信託であっても、購入する金融機関によって販売手数料が異なることがあります。購入金額が一定以上であるために、販売手数料が下がるということであれば、それなりに納得感があるかもしれませんが、同じ購入額であっても手数料が違うということは、シンプルに投資家利益を損なうことになります。つまり投資信託選びは、金融機関選び、すなわち「誰から買うか」もポイントです。必要に応じて、金融商品を販売しないファイナンシャルプランナーなどのアドバイスも活用したいところです。

つみたてNISA基準で選ぶ

金融庁が長期運用に適した投資信託のみをセレクトしたつみたてNISA専用の投資信託は、徹底的にコストにこだわった商品と言えます。

例えば販売手数料はすべての商品がゼロ円です。これは通常3%以上に設定されることが多いアクティブファンドであっても例外を許さず、全商品ゼロ円です。前述した通り、販売手数料を積立の度に負担するということは、それだけで投資効率が下がりますから、投資家としてはコストはできるだけ排除したいものです。

また信託報酬も、国内資産を対象とするインデックスファンドであれば0.5%以下、海外資産を対象とするインデックスファンドであれば0.75%以下と決まっています。つまり、これが長期資産形成におけるスタンダードと心得、たとえ課税口座での購入であったとしてもこの信託報酬を基準に選ぶ目安とするべき、ということです。

一方で同じ指数をベンチマークとするインデックスファンドであっても、その信託報酬に結構差があることもあるので注意が必要です。それはつみたてNISAに設定されているものの中でもあります。

例えば、日本の株式市場に投資をする投資信託でベンチマークがTOPIXまたは日経225に連動するものであれば、最も信託報酬が安いもので0.14%、最も信託報酬が高いもので0.55%と0.41%も開きがあることがわかります。

MSCIコクサイに連動する外国株式インデックスファンドであっても、信託報酬が最も低いものが0.1%であるのに対し、最も高いものは0.66%です。長期視点で考えると、この0.56%や先ほどの0.41%という開きは、決して小さいとは言えないでしょう。

市場の動きに連動する運用を目指すインデックスファンドであれば、ファンドのパフォーマンスに差がつきにくく、結果、信託報酬が高ければその分投資家利益が少なくなることを意味します。特に設定から時間が経った投資信託の信託報酬は高い傾向があります。

最近は、指数に連動してわかりやすい、低コストで運用ができるとインデックスファンドが人気傾向にありますが、インデックスファンドだから低コストなのだと思い込むのは良くありません。

独立系資産運用会社の理念で選ぶ

金融庁が発表した「資産運用業高度化プログレスレポート2022」によると、アクティブファンドにおいては、大手資産運用会社よりも独立系の資産運用会社の方が、選択と集中が功を奏し、良好な運用成果を上げている傾向があると指摘されています。

独立系の資産運用会社の特徴として、投資先の公開や対話内容を投資家向けにわかりやすく開示したり、さらに理解を深めるためにコミュニケーションをとったりする活動があげられます。

筆者は、独立系の資産運用会社の勉強会で、長期運用を目的とすると、企業経営のサステナビリティの評価は非常に重要で、結果的にESG(環境・社会・ガバナンス)投資になるのだ、という話を伺い、なるほどと思った経験があります。大手資産運用会社はその性質上、短期での運用成績が重要視されていると言われていますから、長期の資産形成を目指す私たちにとっては自分の目的と運用会社の目的が同じかどうかを見定めるという視点も必要です。

ESG投資については、金融庁レポートでも、「アクティブ型で信託報酬が高く設定されているものが多く、また運用の評価も十分ではない」と指摘している点も考えると、資産運用会社の理念を知ることの方が、安易に「ESG」と冠を掲げた投資信託を選ぶより重要に思います。

投資とは、そもそも明日はもっと良くなると信じ、努力する姿に共感し応援するものです。具体的に新しいサービスや技術の提供となるかもしれませんが、根底は社会的な課題の解決で、そこに価値を見いだすからこそ、大切な資金を提供しその企業を応援している訳です。しっかり腰を据え企業を支えその成長の恩恵を受けることが長期の資産形成と考えると、その行為を代行している資産運用会社の理念は、むしろ投資家である私たちが最初に学ぶべきところとも言えるでしょう。


以上投資信託を選ぶ際の3つのアプローチをご紹介しました。投資信託を選ぶ際は、「どこに」「いつ」投資をするかばかりを気にする方も少なくありませんが、「誰から」「コストは」「目的は」も重要なポイントです。

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