モントーヤ、フランキッティ、ザナルディ。ガナッシの歴史に名を刻んだサラ・プライス/エクストリームE

 創設2年目のオフロード選手権『エクストリームE』に、電動『HAMMER(ハマー)』で参戦するチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)のサラ・プライスは、2022年第2/3戦“Island X Prix”でライバルの失格騒動にも助けられシリーズ初優勝を達成。この結果、ファン-パブロ・モントーヤ、ダリオ・フランキッティ、そしてアレックス・ザナルディらCGRで勝利を抑めてきた錚々たる面々の系譜に名を連ねる、史上初の女性ドライバーとなった。

 ペアを組む男性ドライバーのカイル・ルデュックとともに、輝かしいリストに名前を加えたプライスは、チーム初勝利の後に「もちろん、私はすぐにチップ(ガナッシ)と話したわ」と、その瞬間のことを笑顔で振り返った。

「チップとの会話はいつも素晴らしいものだけど、ついに『やったわ!』と彼に伝えられるのは、私自身が長い間、まさに楽しみにしていたことだった」と続けたプライス。「私はこのチームの一員であることを誇りに思っているし、彼にも誇りに思ってもらいたい。そして何よりも、私自身が表彰台のトップに立つことに飢えている。彼も、それが私にとってどれほど意味があるかを知っているのよ!」

 プライスとルデュックのふたりにとってそれは待望の勝利でもあり、不運と信頼性の問題は初年度シーズン1を通して彼らを悩ませた。とくに昨季最終戦となった同地イタリア・サルディニア島でのイベントでは、ファイナルの最終ラップで初勝利を逃す苦い経験もした。

「だからこそ、このエクストリームEで優勝しチップ・ガナッシ・レーシングの歴史を作ったことは、おそらく私のキャリアハイライトね。リストの1番上にあると言わざるを得ないわ」と笑うプライス。

 2月の今季開幕戦、サウジアラビアNEOMでの1戦を4位で終えたふたりは、カレンダー延期の余波で約5カ月のインターバルを経たイタリアでもスピードを維持。40km/h上限のドライバースイッチゾーンで速度超過2秒のペナルティを受けながらも最初のFPから最速とし、イベント制覇に向け幸先よくリードを奪った。

「この時点で『そろそろ私たちの番ね!』って気分だった。勝利は絶対条件のように感じたし、後はいつどこでピースが収まるかの問題だった」と続けたプライス。

「その予感の後に、初勝利を収めることができて信じられない気持ちだったし、チップ・ガナッシ・レーシング初の女性ドライバーとして、チームの一員となり、障壁を打ち破り、チップに誇りに思ってもらえることを光栄に思う」

創設2年目のオフロード選手権『エクストリームE』に電動『ハマー』で参戦するチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)
「チップとの会話はいつも素晴らしいものだけど、ついに『やったわ!』と彼に伝えられるのは、私自身が長い間、まさに楽しみにしていたことだった」と続けたサラ・プライス。

■優勝を知ったときは「感情的で信じられないほどの感覚だった」とプライス

 このダブルヘッダー初戦のトラック上では、ニコ・ ロズベルグ率いる初代王者ロズベルグ・Xレーシング(RXR)、ヨハン・クリストファーソン/ミカエラ-アーリン・コチュリンスキー組がファイナルのトップチェッカーをくぐっていた。

 そのため表彰台で2位のシャンパンファイトを繰り広げたNo.99 GMCハマーEVチップ・ガナッシ・レーシングの面々は、意気揚々と会場を後にした後にRXRのペナルティでアメリカ・チームの初優勝が確実なものになったことを知らされた。

「表彰台の周りで『ペナルティ裁定があるかもしれない』という噂は聞いていたの(笑)」とプライス。「でも当時は初めての表彰台だったから、ただその瞬間を楽しみたかった。後で(優勝を)知ったとき、それは感情的で信じられないほどの感覚だったわ。チームがペナルティを受けずに勝ちたかったかって? それは確かにそうだろうけれど、レースでは何でも起こり得るし、私たちはそこにいるよう準備を整えたのも事実よ」

 その言葉どおり、この日のCGR『No.99 GMCハマーEV』は、敗者復活の“Crazy Race”からファイナル最後のひと枠を確保していた。

「昨年は不運にも見舞われ、弱者としてスタートした後、私たちは自分の仕事を切り詰め、ストイックに上を目指してきた。あの日はクレイジーレースに勝たなければならず、これは大きな挑戦だったわ。理想的とは言えないグリッド位置からスタートしたけど、ミスなく走ることができ、すぐに決勝レースに集中することができた。ちょっとした幸運を掴んだと言っても過言ではないわ!」

 現在、プライスとルデュックのふたりは37ポイントと大きなビハインドではあるものの、ランキング首位RXRを追走する2番手につけている。残り2ラウンドで「意味のある」挑戦者になることを希望している。

「現在はRXRがかなりポイントをリードしており、2位にはあと2チームが迫っているから、最後までバトルになると思う。だからこそ、私たちはベストを尽くすだけ。そして私自身、オフロード・レーサーとしての本能を引き継ぎ、証明したいだけなの。このエクストリームEではどんなことでも起こり得る。準備は万端よ!」

 この後のチャンピオンシップは南米で初のイベント開催を予定し、9月24~25日にはチリのアントファガスタで『Copper X Prix』が、11月26~27日にはウルグアイに向かい、プンタ・デル・エステでの最終戦『Energy X Prix』が争われる。

第2戦では40km/h上限のドライバースイッチゾーンで速度超過2秒のペナルティを受けながらも最初のFPから最速とし、イベント制覇に向け幸先よくリードを奪った
「エクストリームEで優勝しチップ・ガナッシ・レーシングの歴史を作ったことは、おそらく私のキャリアハイライトね。リストの1番上にあると言わざるを得ないわ」とプライス

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